原告としてどの裁判所に訴えを提起するか、被告としてどの裁判所で応訴するかにおいて参考となる、裁判所の管轄をまとめました。
特許権等、意匠権等の訴えの場合については紹介していないため、必要に応じて民事訴訟法の原文にあたってください。
民事訴訟事件を審理判断する民事訴訟を行う国家の権能を民事裁判権といい、刑事裁判権と並び司法権を構成します。
裁判所は、一切の法律上の争訟を裁判する権限を有するとされています。(裁判所法第3条)
管轄総論
伊藤眞 (東京大学名誉教授)/著『民事訴訟法 第7版』(有斐閣、2020年)39頁
第一審の管轄裁判所は、職分管轄及び事物管轄により、訴額140万円以下なら簡易裁判所(訴額60万円以下なら少額訴訟も可)(裁判所法第33条第1項)、140万円超えなら地方裁判所(裁判所法第24条第1号)、人事訴訟なら家庭裁判所(裁判所法第31条の3第1項第2号)です。
簡易裁判所の特徴は次のとおりです。
・口頭で訴えを提起することができる(民事訴訟法第271条)
・請求の原因に代えて紛争の要点を明らかにすれば足りる(民事訴訟法第272条)
・口頭弁論の書面準備の必要はない(民事訴訟法第276条)
・原告又は被告の一方が口頭弁論の続行の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしない場合にも、裁判所はその者が提出した訴状又は答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることができる(民事訴訟法第277条)
・裁判所が相当と認めるときは、尋問の陳述に代えて書面の提出をさせることができる(民事訴訟法第278条)
・許可代理人制度がある(民事訴訟法第54条)
しかし、口頭ベースより書面ベースで審理を進めるのが望ましいこと、原告としては続行期日においても出席すべきであることからすると、それほどメリットがある制度ではありません。書面尋問や許可代理人制度をみると、簡易裁判所での手続もよいでしょう。
具体的にどの簡易裁判所、地方裁判所、家庭裁判所が管轄裁判所となるかは、土地管轄により定まります。被告の普通裁判籍(住所・主たる事務所又は営業所)の所在地を管轄する裁判所(民事訴訟法第4条)のみならず、義務履行地(民事訴訟法第5条第1号。弁済は債権者の訴え提起時の住所であることについて民法第484条)、不法行為の加害行為地及び損害発生地(民事訴訟法第5条第9号)などが独立裁判籍として認められています。
したがって、被告の住所が東京都、原告の住所が愛知県であって、訴額300万円の民事事件は、東京地方裁判所(普通裁判籍)又は名古屋地方裁判所(義務履行地)に管轄権があるというのが一般的です。
ただし、第一審の土地管轄及び事物管轄は、訴えの提起の前に、契約など一定の法律関係を特定して、当事者の電磁的記録を含む書面による合意によって管轄裁判所を付加的又は専属的に定めることも可能です。(民事訴訟法11条)
したがって、上記の例では、東京と愛知の間をとって(?)甲府地方裁判所を管轄裁判所としたり、名古屋地方裁判所ではなく東京地方裁判所を専属的管轄裁判所としたりできます。
管轄違いの場合は、第一審裁判所において被告が管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論・弁論準備手続に進んだときは、応訴管轄としてその第一審裁判所が管轄権を有します。(民事訴訟法12条)
管轄違いであるときは、理由を明らかにした書面での申立て(民事訴訟規則第7条)により又は職権で移送の裁判をして、管轄裁判所である受移送裁判所に訴訟を移送します(民事訴訟法第16条第1項)。移送により、訴訟要件の欠缺により却下された後、改めて手数料の納付をしなければならないといった原告の不都合を防ぐことができます。
管轄通りの場合でも、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは理由を明らかにした書面での申立て(民事訴訟規則第7条)により又は職権で他の管轄裁判所に(民事訴訟法第17条)、家庭裁判所に係属する人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害賠償請求に係る訴訟の係属する第一審裁判所からは、理由を明らかにした書面での申立て(民事訴訟規則第7条)によりその家庭裁判所に(人事訴訟法第8条第1項)、被告が本案について弁論若しくは弁論準備手続において申述する前に(簡易裁判所から地方裁判所はこの要件は不要)理由を明らかにした書面での申立て(民事訴訟規則第7条)及び相手方の同意があるときは申立ての地方裁判所又は簡易裁判所に(民事訴訟法19条)移送することができます。
管轄とは
管轄とは、裁判所の事務分担の定めのことです。
伊藤眞 (東京大学名誉教授)/著『民事訴訟法 第7版』(有斐閣、2020年)66頁
管轄の種類
管轄.xlsx(OneDriveへのリンク)
職分管轄
職分管轄は、裁判権の種々の作用をどの裁判所に分担させるのが適当かといった目的に照らして定められるものです。
- 判決裁判所か執行裁判所か
- 少額訴訟や即時和解は簡易裁判所(民事訴訟法第368条第1項)
- 上訴に関する審級管轄権
- 人事訴訟の第一審は家庭裁判所(裁判所法第31条の3、人事訴訟法第4条第1項)
- 審級管轄
※第一審の受訴裁判所はどこか、上訴はどの裁判所かといった問題についての定め
※第一審裁判所は、簡易裁判所(裁判所法第33条第1項)、家庭裁判所(裁判所法第31条の3第1項第2号)、地方裁判所(裁判所法第24条第1号)
※控訴審は、簡易裁判所の場合は地方裁判所(裁判所法第24条第3号)、家庭裁判所・地方裁判所の場合は高等裁判所(裁判所法第16条第1号)
※上告審は、簡易裁判所第一審事件は高等裁判所(裁判所法第16条第3号)、家庭裁判所及び地方裁判所第一審事件は最高裁判所(裁判所法第7条第1号) - 公示催告手続などに関する簡易裁判所の管轄権
職分管轄は、裁判権の合理的分担という公益的視点から一義的に決定されるべきものであるため、法定管轄であり、かつ、当事者の意思による変更を許さない専属管轄とされています(法定専属管轄)。
離婚訴訟は家庭裁判所の専属管轄なので、地方裁判所に提起することは、当事者の合意があってもできません。
事物管轄
事物管轄とは、第一審の受訴裁判所としての裁判権の行使を地方裁判所と簡易裁判所に分担させる目的のために、訴額140万円超えは地方裁判所(裁判所法第24条第1号)、140万円以下なら簡易裁判所(裁判所法第33条第1項第1号)と分担するものです。
比較的少額の事件を簡易迅速に処理するため簡易裁判所に分担させる趣旨の法定管轄ではあるものの、簡易裁判所か地方裁判所かは当事者の判断を尊重する余地を残すため、専属ではなく任意管轄とされています。
事物管轄は、比較的柔軟な任意管轄といえます。
- 当事者の合意(民事訴訟法11条)
- 応訴管轄(民事訴訟法12条)
- 管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する場合でも、申立てにより、又は職権で、相当と認めるときは地方裁判所の自庁処理(民事訴訟法16条第2項)
- 簡易裁判所は、訴訟が簡易裁判所の管轄に属する場合であっても、簡易裁判所が相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、地方裁判所に移送可能(民事訴訟法18条)
訴訟の目的の価額(訴額)は、訴えで主張する利益によって算定します(民事訴訟法第8条第1項)。訴額について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
準備中です。
土地管轄
土地管轄とは、職分管轄及び事物管轄をもつ管轄裁判所が、所在地を異にして複数存在する場合に、どの地の裁判所に管轄権を認めるべきかに関する定めです。
多数の民事事件を各地の裁判所に合理的に配分する点で司法制度の運用とかかわりがあるため土地管轄の発生原因を規定し、原告がどの裁判所に訴えを提起するか、被告はどこで応訴をするかといった両当事者の利益を考慮して当事者の意思によって土地管轄を変更することも認められています。
裁判籍
裁判籍とは、事件と地域との連結点です。
管轄区域は昭和22年4月17日法律下級裁判所法別表第5表に規定されていますが、行政区画の変更があるため、一般的には、裁判所の管轄区域から土地管轄を確認します。
普通裁判籍
訴えを提起するかどうかは原告が決め、被告は応訴を強制されてしまうため、被告の生活の本拠地の裁判所に管轄を認めるのが公平に合致すると考えられています。
民事訴訟法も、訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属するとしています。(民事訴訟法第4条)
- 人
- 普通裁判籍は住所により定まる
- 日本国内に住所がいないとき又は住所が知れないときは居所により定める
- 日本国内に住所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる
- 社団又は財団
- 普通裁判籍はその主たる事務所又は営業所により定まる
- 事務所又は営業所がないときは代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる
社団又は財団の普通裁判籍は主たる事務所又は営業所の所在地を管轄する裁判所の管轄に属することとなりますが、登記された本店等の所在地を管轄する裁判所に訴えを提起すれば差し支えないと考えます。
特別裁判籍
特別裁判籍には、独立裁判籍と関連裁判籍があります。(民事訴訟法5条ほか)
併合請求の場合は、1の請求について管轄権を有する裁判所に訴えを提起することが可能です(関連裁判籍)。(民事訴訟法7条)
訴え | 管轄権を有する裁判所 |
---|---|
(普通裁判籍) | 被告の住所地又は主たる事務所若しくは営業所を管轄する裁判所 (民事訴訟法第4条) |
財産権上の訴え(5条1号) | 義務履行地を管轄する裁判所 |
事務所又は営業所を有する者に対する訴えでその事務所又は営業所における業務に関するもの(5条5号) | その事務所又は営業所の所在地を管轄する裁判所 ※契約の締結や金銭の支払について一定の判断権限が与えられていること |
会社その他の社団又は財団に関する訴えで次に掲げるもの(5条8号) イ 会社その他の社団からの社員若しくは社員であった者に対する訴え、社員からの社員若しくは社員であった者に対する訴え又は社員であった者からの社員に対する訴えで、社員としての資格に基づくもの ロ 社団又は財団からの役員又は役員であった者に対する訴えで役員としての資格に基づくもの ハ 会社からの発起人若しくは発起人であった者又は検査役若しくは検査役であった者に対する訴えで発起人又は検査役としての資格に基づくもの ニ 会社その他の社団の債権者からの社員又は社員であった者に対する訴えで社員としての資格に基づくもの | 社団又は財団の普通裁判籍の所在地 |
不法行為に関する訴え(5条9号) | 不法行為があった地を管轄する裁判所 ※加害行為地と損害発生地が含まれるとされる。 |
不動産に関する訴え(5条12号) | 不動産の所在地 |
登記又は登録に関する訴え(5条13号) | 登記又は登録をすべき地 |
相続権若しくは遺留分に関する訴え又は遺贈その他死亡によって効力を生ずべき行為に関する訴え(5条14号) | 相続開始の時における被相続人の普通裁判籍の所在地 |
相続債権その他相続財産の負担に関する訴えで前号に掲げる訴えに該当しないもの(5条15号) | 前号に定める地 |
関連裁判籍 ※併合請求 | 請求について管轄権を有する裁判所 |
専属的合意管轄又は付加的合意管轄 ※一定の法律関係(売買契約・賃貸借契約など)について、訴えの提起の時までに電磁的記録を含めた書面によって合意した場合 | その裁判所 |
応訴管轄 ※被告が第一審裁判所において管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたとき | その裁判所 |
不動産に関する訴えは、物権に関する確認訴訟、物権的請求権に基づく訴訟、共有不動産分割の訴え、移転登記、引渡しなどを求める訴えが含まれますが、売買代金や賃料などの支払を求める訴えは含まないと解されています。
合意管轄
第一審に限り、土地管轄(専属管轄を除く)及び事物管轄の法定管轄は、訴えの提起の前に、売買契約、賃貸借契約など一定の法律関係を特定して、当事者の電磁的記録を含む書面による合意によって管轄裁判所を定めることができます。(民事訴訟法11条)
すべての裁判所を管轄裁判所とする旨の合意は、被告の管轄の利益を奪うという理由から無効とされます。すべての裁判所の管轄を排除する旨の合意は、不起訴の合意と解釈される可能性があります。
合意は、他の法定管轄権を排除する専属的合意と、法定管轄に付け加えて特定の裁判所に管轄権を生じさせる付加的合意に分けられます。
法定管轄裁判所以外の裁判所を管轄裁判所とする合意がなされているときは、合意によって特定の裁判所が指定されている以上、専属的合意と解するのが有力です。
専属的合意であっても、応訴管轄は生じえます。
伊藤眞 (東京大学名誉教授)/著『民事訴訟法 第7版』(有斐閣、2020年)85頁
本契約に関する一切の紛争(裁判所の調停手続を含む)は、◯◯地方裁判所(又は◯◯簡易裁判所)を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。
応訴管轄
管轄違いであっても、第一審裁判所において被告が管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論・弁論準備手続に進んだときは、応訴管轄としてその裁判所が管轄権を有することになります。(民事訴訟法12条)
本案に関する被告の口頭の陳述を指すので、準備書面の提出では弁論があったとみなされません。
管轄違いの抗弁に対しては、移送決定(民事訴訟法第16条第1項)が対応します。
管轄違いの抗弁は移送申立てと同視できることを考えると、排斥する場合には移送申立却下決定の形で、決定手続での裁判に統一するほうが合理的といわれています。
伊藤眞 (東京大学名誉教授)/著『民事訴訟法 第7版』(有斐閣、2020年)89頁
管轄権の調査
管轄権の存在は訴訟要件の1つであるため、専属管轄ではなく被告が本案について弁論・弁論準備手続に進む前に管轄を争わなかった場合を除き(民事訴訟法12条)、裁判所は、本案判決の前提要件として、職権調査により管轄権の存在を調査しなければならず、職権で証拠調べをすることができます(民事訴訟法第14条)。
職権探知は公益性の強い専属管轄に限られ、土地管轄など任意管轄は弁論主義が妥当すると解されています。また、(客観的)証明責任が適用され、原因が不明のときは、管轄原因の存在を主張する側に不利な判断がされます。
伊藤眞 (東京大学名誉教授)/著『民事訴訟法 第7版』(有斐閣、2020年)91頁
移送
管轄違いの移送
管轄裁判所への移送
移送裁判所は、訴訟の全部又は一部が裁判所の管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、移送の裁判をして、管轄裁判所である受移送裁判所に訴訟を移送します。(民事訴訟法第16条第1項)
移送の申立ては、申立ての理由を明らかにしなければなりません。また、期日においてする場合を除き、書面でしなければなりません。(民事訴訟規則第7条)
移送の決定及び移送の申立てを却下した決定に対しては、即時抗告をすることができます(民事訴訟法第21条)。移送決定に対して即時抗告がされたときは、執行停止(民事訴訟法第334条第1項)の効力として移送されることはなく、移送裁判所は自らの移送決定に拘束されて本案の審理を進めることはできません。移送申立却下決定に対して即時抗告が提起されたときは、却下決定の効力が停止しても、受訴裁判所による本案の審理が妨げられるわけではありません。
移送は、訴訟要件の欠缺として却下原因となり、原告は改めて手数料を添えた訴えの提起を余儀なくされることを防ぐ効果、原告が選択した裁判所において審理が行われることが当事者及び裁判所にとって著しく不都合な場合に適正な審理の実現を図る効果(民事訴訟法17条)があります。
管轄通りの移送
訴訟の遅滞を避けるための移送・当事者間の衡平を図るための移送
第一審裁判所は、訴訟が第一審裁判所の管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができます。(民事訴訟法第17条)
主に、当事者の住所を考慮して訴訟の著しい遅滞を避けること、当事者間の衡平を図ることのために必要があるときは、他の管轄裁判所に移送することができます。
移送の申立ては、申立ての理由を明らかにしなければなりません。また、期日においてする場合を除き、書面でしなければなりません。(民事訴訟規則第7条)
遅滞を避ける等のための移送は、裁判所は、相手方の意見を聴いて決定をします。職権により移送の決定をするときは、裁判所は、当事者の意見を聴くことができます。(民事訴訟規則第8条)
移送の決定及び移送の申立てを却下した決定に対しては、即時抗告をすることができます(民事訴訟法第21条)。移送決定に対して即時抗告がされたときは、執行停止(民事訴訟法第334条第1項)の効力として移送されることはなく、移送裁判所は自らの移送決定に拘束されて本案の審理を進めることはできません。移送申立却下決定に対して即時抗告が提起されたときは、却下決定の効力が停止しても、受訴裁判所による本案の審理が妨げられるわけではありません。
専属的合意専属を除き、裁判所の専属管轄に属する場合は、移送は認められません。(民事訴訟法第20条第1項)
人事訴訟の関連損害賠償請求訴訟の移送
家庭裁判所に係属する人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟の係属する第一審裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより、当該訴訟をその家庭裁判所に移送することができます。この場合においては、その移送を受けた家庭裁判所は、当該損害の賠償に関する請求に係る訴訟について自ら審理及び裁判をすることができます。(人事訴訟法第8条第1項)
たとえば、離婚訴訟が家庭裁判所が係属しており、その請求原因事実が配偶者に不貞な行為があったこと(離婚原因)(民法第770条第1項第1号)であるとき、配偶者に不貞な行為があったことによって生じた損害賠償請求訴訟の係属する地方裁判所は、申立てにより家庭裁判所に移送でき、移送を受けた家庭裁判所は併合審理しなければなりません。
判例は、離婚訴訟において原告が不貞をした有責配偶者であるため被告が離婚請求の棄却を求めている場合にも、離婚請求の棄却を求める被告が提起した第三者との不貞行為を理由とする損害賠償請求訴訟の家庭裁判所への移送を認めています(最判平成31年2月12日民集73巻2号107頁参照)。
不貞相手に対する損害賠償請求訴訟も家庭裁判所で併合審理できることがわかります。
移送の申立ては、申立ての理由を明らかにしなければなりません。また、期日においてする場合を除き、書面でしなければなりません。(民事訴訟規則第7条)
移送の決定及び移送の申立てを却下した決定に対しては、即時抗告をすることができます(民事訴訟法第21条)。移送決定に対して即時抗告がされたときは、執行停止(民事訴訟法第334条第1項)の効力として移送されることはなく、移送裁判所は自らの移送決定に拘束されて本案の審理を進めることはできません。移送申立却下決定に対して即時抗告が提起されたときは、却下決定の効力が停止しても、受訴裁判所による本案の審理が妨げられるわけではありません。
専属的合意専属を除き、裁判所の専属管轄に属する場合は、移送は認められません。(民事訴訟法第20条第1項)
必要的移送
第一審裁判所は、訴訟が管轄に属する場合であっても、当事者の申立て及び相手方の同意があるときは、専属管轄であるとき、移送により著しく訴訟手続を遅滞させることとなるとき、簡易裁判所から地方裁判所への移送申立て以外のものであって被告が本案について弁論若しくは弁論準備手続において申述した後にされた申し立てであるときを除き、申立ての地方裁判所又は簡易裁判所に移送しなければなりません。(民事訴訟法19条)
移送の申立ては、申立ての理由を明らかにしなければなりません。また、期日においてする場合を除き、書面でしなければなりません。(民事訴訟規則第7条)
移送の決定及び移送の申立てを却下した決定に対しては、即時抗告をすることができます(民事訴訟法第21条)。移送決定に対して即時抗告がされたときは、執行停止(民事訴訟法第334条第1項)の効力として移送されることはなく、移送裁判所は自らの移送決定に拘束されて本案の審理を進めることはできません。移送申立却下決定に対して即時抗告が提起されたときは、却下決定の効力が停止しても、受訴裁判所による本案の審理が妨げられるわけではありません。
移送に関する不服申立て
移送の申立てを却下した決定、移送の決定に対しては、裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内(民事訴訟法第332条)に、即時抗告をすることができます。(民事訴訟法第21条)
移送の効果
移送の裁判が確定したときは、移送の裁判をした裁判所の裁判所書記官は、移送を受けた裁判所の裁判所書記官に対し、訴訟記録を送付しなければなりません。(民事訴訟規則第9条)
当事者の対応
原告
まずは、自己に有利な専属的合意管轄又は付加的合意管轄を指定することがおすすめです。
自己に不利な場合や合意管轄の指定がない場合は、原告は、普通裁判籍ではなく独立裁判籍(特に義務履行地)や関連裁判籍を検討し、最終的には応訴管轄を検討します。もちろん、被告の住所地でも問題なければその他の裁判籍等を検討する必要はありません。
被告
まずは、自己に有利な専属的合意管轄又は付加的合意管轄を指定することがおすすめです。
被告としては、管轄違いの場合は本案の弁論・申述をする前に、普通裁判籍を主張して移送の申立てをします。管轄に属する場合は、原告の合意を取り付けて必要的移送を申し立てるか、それができなければ衡平のために必要があることを主張して移送を申し立てましょう。
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