当事者とは
当事者とは、判決を求める者及び判決を求められる者です。
当事者の訴訟手続上の地位として、公平、かつ、適正な審判を受けるために次のような権能(当事者権)が保障されています。
- 移送申立権(民事訴訟法第16条、第17条、第18条、第19条)
- 除斥・忌避申立権(民事訴訟法第23条第2項、第24条第1項、第27条)
- 訴訟代理人選任権(民事訴訟法第54条)
- 訴状・判決書の送達を受ける権利(民事訴訟法第138条第1項、第255条第1項)
- 期日指定申立権(民事訴訟法第93条第1項)
- 期日の呼出しを受ける権利(民事訴訟法第94条)
- 求問権(民事訴訟法第149条第3項)
- 責問権(民事訴訟法第90条)
- 訴訟記録閲覧権(民事訴訟法第91条)
- 審判の対象を定める権利(民事訴訟法第246条)
- 訴えの取下げ(民事訴訟法第261条)、請求の放棄・認諾(民事訴訟法第266条)、和解(民事訴訟法第265条)などの処分権
- 弁論権(民事訴訟法第87条)
- 上訴権(民事訴訟法第281条)
当事者能力
当事者能力とは、訴訟上・手続上の請求定立の主体(原告)及びその相手方(被告)となりうる資格です。訴訟要件の1つとなります。
伊藤眞 (東京大学名誉教授)/著『民事訴訟法 第7版』(有斐閣、2020年)124頁
原則
当事者能力や訴訟能力(手続行為能力)及び訴訟無能力者の法定代理は、原則として民法その他の法令に従うものとします。(民事訴訟法第28条、家事事件手続法第17条もこれを準用)
当事者能力まとめ
対象者 | 当事者能力 | 根拠条文 |
---|---|---|
自然人 | ◯ | 民法第3条 |
法人 | ◯ | 民法第34条(法人格) |
法人でない社団又は財団 | 代表者又は管理人の名において◯ | 民事訴訟法第29条 家事事件手続法第17条 |
共同の利益を有する多数の者 | ◯(選定当事者制度について後述) | 民事訴訟法第30条 |
一般社団法人、一般財団法人、株式会社、持分会社は設立の登記をすることにより成立し(一般法人法第22条、第163条、会社法第49条、第579条)、法人とされている(一般法人法第3条、会社法第3条)ことから、権利義務の主体すなわち権利能力がある(民法第34条)ため、訴訟において当事者能力が認められます(民事訴訟法第28条)。支店・営業所には権利能力(法人格)がないため、当事者とすることはできません。
当事者が会社であるときは、会社の所在地、会社名、代表者の氏名を記載します。(訴状記載例)
選定当事者
(選定当事者)
第三十条 共同の利益を有する多数の者で前条の規定に該当しないものは、その中から、全員のために原告又は被告となるべき一人又は数人を選定することができる。
2 訴訟の係属の後、前項の規定により原告又は被告となるべき者を選定したときは、他の当事者は、当然に訴訟から脱退する。
3 係属中の訴訟の原告又は被告と共同の利益を有する者で当事者でないものは、その原告又は被告を自己のためにも原告又は被告となるべき者として選定することができる。
4 第一項又は前項の規定により原告又は被告となるべき者を選定した者(以下「選定者」という。)は、その選定を取り消し、又は選定された当事者(以下「選定当事者」という。)を変更することができる。
5 選定当事者のうち死亡その他の事由によりその資格を喪失した者があるときは、他の選定当事者において全員のために訴訟行為をすることができる。
引用元:民事訴訟法第30条
要件
選定当事者制度は、次の要件を満たす多数の者(共同利害関係人)について、その中から、全員のために原告又は被告となるべき1人又は数人を選定することができるとする制度です。(民事訴訟法第30条第1項)
- 共同の利益を有する多数の者
- 代表者又は管理人の定めがある法人でない社団又は財団ではない
※代表者又は管理者の名において当事者能力が認められているため(民事訴訟法第29条)
工場の近隣住民、全国の購入者、組合員、入会権者、共有者、連帯債務者、同一事故による多数の被害者などが選定者(共同利害関係人)となります。選定者(共同利害関係人)は、2人だけでも足ります。
方法
選定方法の規定はありませんが、選定当事者についての書面を裁判所に提出しなければなりません。(民事訴訟規則第15条)
効果としての権利義務
当事者を選定すると、選定された当事者は、共同の利益を有する全員のために原告又は被告として訴訟行為を遂行します。(民事訴訟法第30条第1項)
訴訟の係属後に当事者が選定されると、他の当事者は当然に訴訟から脱退し、訴訟行為を遂行することができなくなります。(民事訴訟法第30条第2項)
ただし、係属中の訴訟の原告又は被告と共同の利益を有する者であって当事者でないものは、その原告又は被告を自己のためにも原告又は被告となるべき者として選定することができます。
選定当事者が原告である場合は、口頭弁論の終結に至るまで、その選定者のために請求の追加をすることができ、被告の選定があった場合には、原告は、口頭弁論の終結に至るまでその選定者に係る請求の追加をすることができます。ただし、著しく訴訟手続を遅滞させることとなるときはこの限りではなく、請求の追加は書面でし、相手方に送達しなければならず、その追加を裁判所が不当であると認めるときは、申立てにより又は職権で、その追加を許さない旨の決定をしなければなりません。(民事訴訟法第144条)
訴訟能力(手続行為能力)
伊藤眞 (東京大学名誉教授)/著『民事訴訟法 第7版』(有斐閣、2020年)132頁
訴訟能力の意義
訴訟能力(手続行為能力)とは、訴訟行為(手続行為)を自ら単独で有効に行うことができ、又は訴訟行為(手続行為)の相手方となることができる能力(地位)です。
訴訟能力の原則
訴訟能力(手続行為能力)及び訴訟無能力者の法定代理は、原則として民法その他の法令に従うものとします。(民事訴訟法第28条、家事事件手続法第17条もこれを準用)
したがって、法人自体に訴訟能力は認められません。
訴訟無能力者(特則)
成年被後見人と未婚の未成年者、会社、社団又は財団は訴訟無能力者であって、訴訟行為をするには法定代理人(会社は代表者)(訴訟代理人)による必要があります。(民事訴訟法第31条、民事訴訟法第37条、家事事件手続法第17条もこれを準用)
人事訴訟の訴訟手続における訴訟行為については、未成年者は親権者の同意がなくても取り消すことはできず、成年被後見人の法律行為は取り消すことができず、被保佐人は保佐人の同意を要せず、被補助人は補助人の同意を要せず、法定代理人によらずとも訴訟行為をすることができます。(人事訴訟法第13条第1項)
法定代理人は、次のとおりです。(民事訴訟法第28条)
法定代理権は、書面により証明をしなければなりません。(民事訴訟規則第15条、第18条は法人等について準用)
- 被後見人の財産に関する法律行為は後見人が代表する(民法第859条)
- 後見人と被後見人の利益が相反する行為については、監督人がいる場合を除き、後見人は、被後見人のために家庭裁判所に対して特別代理人の選任を請求しなければならない(民法第860条)
- 未婚の未成年者の財産に関する法律行為は親権者が代表する(民法第824条)
- 親権者と子の利益が相反する行為については、親権者は、その子のために家庭裁判所に対して特別代理人の選任を請求しなければならない(民法第826条)
- 会社
- その他
- 訴訟行為の代理権を付与された保佐人(民法第876条の4第1項)
- 訴訟行為の代理権を付与された補助人(民法第876条の9第1項)
- 相続財産清算人(民法第936条)
- 相続財産管理人(民法第897条の2)
- 不在者財産管理人(民法第25条、第28条)
当事者が未婚の未成年者であるときは、訴訟行為は親権者によらなければならないため、戸籍全部事項証明書をもって法定代理権を証明する必要があります。訴状など裁判所に提出する書面では、次のように記載します。(民事訴訟規則第2条第1項第1号)
法定代理人 親権者 父 ◯◯◯◯
法定代理人 親権者 母 ◯◯◯◯
当事者が株式会社であるときは、訴訟行為は代表者によらなければならないため、登記事項証明書(代表者資格証明書)をもって代表者を証明する必要があります。訴状など裁判所に提出する書面では、次のように記載します。(民事訴訟規則第2条第1項第1号)
代表者 代表取締役 ◯◯◯◯
訴訟制限能力者(特則)
被保佐人、訴訟行為をすることにつき補助人の同意を得ることを要する被補助人、後見人その他の法定代理人(社団又は財団の代表者を含む)は、不完全訴訟能力者(制限訴訟能力者)であって(民事訴訟法第32条第1項)、相手方の提起した訴え又は上訴について訴訟行為をするには同意を要しませんが、次に掲げる訴訟行為をするには、保佐人若しくは保佐監督人、補助人若しくは補助監督人、後見監督人の同意その他の授権が必要です(民事訴訟法第32条第2項)。
人事訴訟の訴訟手続における訴訟行為については、未成年者は親権者の同意がなくても取り消すことはできず、成年被後見人の法律行為は取り消すことができず、被保佐人は保佐人の同意を要せず、被補助人は補助人の同意を要せず、法定代理人によらずとも訴訟行為をすることができます。(人事訴訟法第13条第1項)
- 訴えの取下げ
- 和解
- 請求の放棄・認諾
- 訴訟脱退
- 上訴の取下げ
- 異議の取下げ
- 上訴権の放棄
訴訟行為をするのに必要な授権は、書面により証明をしなければなりません。(民事訴訟規則第15条、第18条は法人等について準用)
代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する(会社法第349条第4項)ため、特別の授権は不要です。
区分 | 民法上の行為能力 | 訴訟能力 手続行為能力 |
---|---|---|
未成年者 =訴訟無能力者 | 法律行為をするには、法定代理人の同意が必要 ※民法5条 | 親権者が必要 ※民訴法31条 ※家事手続法17条もこれを準用 |
成年被後見人 =訴訟無能力者 | 法律行為は、取り消すことができる ※民法9条 | 後見人が必要 ※民訴法31条 ※家事手続法17条もこれを準用 |
被保佐人 被補助人 後見人 その他の法定代理人(親権者) | 保佐人の同意を得なければならない ※民法13条 補助開始の審判の請求者又は補助人若しくは補助監督人の請求により家庭裁判所が審判した特定の法律行為は、補助人の同意を得なければならない ※民法17条 | 被告・相手方・被抗告人としては同意その他の授権は不要 ※民訴法32条 ※家事事件手続法第17条第2項 以下は特別の授権が必要 ・訴えの取下げ ・和解 ・請求の放棄 ・請求の認諾 ・脱退 ・審判又は調停の申立ての取下げ ・調停合意 ・申立ての趣旨のとおりの審判を受けることについての合意 ・調停条項案の受諾 ・調停に代わる審判に服する旨の共同の申出 ・控訴の取下げ ・上告の取下げ ・上告受理の申立ての取下げ ・審判に対する即時抗告の申立ての取下げ ・特別抗告の申立ての取下げ ・許可抗告の申立ての取下げ ・合意に相当する審判に対する異議の申立ての取下げ ・調停に代わる審判に対する異議の申立ての取下げ ※民訴法32条2項 ※家事事件手続法第17条第2項 |
外国人 | 日本法で訴訟能力を有すべきときは訴訟能力者とみなす ※民事訴訟法33条 ※家事事件手続法第17条第1項もこれを準用 |
訴訟代理人
訴訟上の代理とは、代理人が当事者本人のためにすることを示して訴訟行為を行い、又は訴訟行為の相手方となることです。
伊藤眞 (東京大学名誉教授)/著『民事訴訟法 第7版』(有斐閣、2020年)141頁
法定代理・弁護士代理の原則
法令により裁判上の行為をすることができる代理人(法定代理人)のほか、任意代理は弁護士でなければ訴訟代理人となることはできません。(民事訴訟法第54条、家事事件手続法第22条、非訟事件手続法第22条(調停など)、借地借家法第44条)
法定代理人がない場合又は利益相反などにより法定代理人が代理権を行うことができない場合において、未成年者又は成年被後見人に対し訴訟行為をしようとする者は、遅滞のため損害を受けるおそれがあることを疎明して、受訴裁判所の裁判長に特別代理人の選任を申し立てることができます。(民事訴訟法35条)
家事調停・家事審判事件についても、利害関係人の申立て又は職権で特別代理人を選任します。(家事事件手続法第19条)
許可代理人制度
簡易裁判所においては、簡易裁判所の許可を得て弁護士でない者を訴訟代理人とすることができますが、簡易裁判所は、いつでもその許可を取り消すことができます。(民事訴訟法第54条)(借地借家法第44条)
家庭裁判所においては、家庭裁判所の許可を得て、弁護士でない者を手続代理人とすることができますが、この許可はいつでも取り消すことができます。(家事事件手続法第22条)
訴訟代理権・手続代理権の発生
訴訟代理権授与は、訴訟代理人たるべき者に対して意思表示をして、相手方に到達したときに、訴訟代理権が発生します。訴訟代理人の権限は書面で証明しなければなりません。(民事訴訟規則第23条第1項)
訴訟代理権・手続代理権の範囲
訴訟代理人は、委任を受けた事件について、反訴、参加、強制執行、仮差押え及び仮処分に関する訴訟行為をし、かつ、弁済を受領することができます。ただし、次の事項については特別の委任を受けなければなりません(特別委任事項)。(民事訴訟法第55条、家事事件手続法第24条)
訴訟代理権は制限することができませんが、弁護士でない訴訟代理人については、この限りではありません。
時効の援用、相殺・解除・取消しも可能と解されています。
代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する(会社法第349条第4項)ため、特別の委任は不要です。
訴訟 | 家事事件 | ||
範囲内 | 特別の委任 | 範囲内 | 特別の委任 |
反訴に対する応訴 | 反訴の提起 | - | - |
参加 | 訴えの取下げ | 参加 | 家事審判又は家事調停の申立ての取下げ |
強制執行 | 和解 | 強制執行 | 調停における当事者間の合意(調停調書) |
仮差押え・仮処分 | 請求の放棄 | 保全処分 | 申立ての趣旨のとおりの審判を受けることについての合意(合意に相当する審判) |
弁済の受領 | 請求の認諾 | 弁済の受領 | 調停条項案の書面による受諾 |
独立当事者参加からの訴訟脱退 | 調停に代わる審判に服する旨の共同の申し出 | ||
義務承継人の訴訟引受けからの訴訟脱退 | 審判に対する即時抗告 | ||
義務承継人の訴訟参加からの訴訟脱退 | 審判に対する特別抗告 | ||
控訴 | 調停審判に対する特別抗告 | ||
上告 | 審判に対する許可抗告の申立て | ||
上告受理の申立て | 調停審判に対する許可抗告の申立て | ||
控訴の取下げ | 合意に相当する審判に対する異議 | ||
上告の取下げ | 調停に代わる審判に対する異議 | ||
上告受理の申立ての取下げ | |||
代理人の選任 |
個別代理
訴訟代理人が数人あるときは、各自、当事者を代理します。(民事訴訟法第56条、家事事件手続法第26条、非訟事件手続法第24条もこれを準用)
当事者による更正
訴訟代理人の事実に関する陳述は、当事者が直ちに取り消し、又は更正したときは、その効力を生じません。(民事訴訟法第57条、家事事件手続法第26条、非訟事件手続法第24条もこれを準用)
訴訟代理権の不消滅
民法上、任意代理権は本人の死亡、代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと、委任の終了によって消滅します。(民法第111条)
しかし、訴訟代理権は、次の事由によっては消滅しません。(民事訴訟法第58条、家事事件手続法第26条、非訟事件手続法第24条もこれを準用)
- 当事者(本人)の死亡又は訴訟能力の喪失(1号)
- 当事者である法人の合併による消滅(2号)
- 当事者である受託者の信託に関する任務の終了(3号)
- 法定代理人の死亡、訴訟能力の喪失又は代理権の消滅若しくは変更(4号)
訴訟代理権の消滅
民法上、任意代理権は、委任の終了のほか、本人又は代理人の死亡、代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたことにより消滅します。(民法第111条)
訴訟代理権は、当事者の死亡又は訴訟能力の喪失、合併、法定代理人の死亡・訴訟能力の喪失又は代理権の消滅若しくは変更などの事由によっては消滅しません(民事訴訟法第58条)。
訴訟代理権が消滅するのは、次のとおりです。(民法第111条)
- 弁護士資格の喪失
- 代理人の死亡
- 代理人に対する後見開始の審判
- 代理人の破産手続開始の決定
- 委任の終了(民法第653条)
- 委任事件の終了
- 委任者又は受任者に対する破産手続開始の決定
- 委任の解除(民法第651条)
訴訟代理権の消滅は、相手方に通知しない限り効力を生じません。
法定代理権及び訴訟代理権の消滅の通知
法定代理権及び訴訟代理権の消滅は、本人又は代理人から相手方に通知しなければ、その効力は生じません。(民事訴訟法第36条、第59条)
訴訟能力、法定代理権、訴訟代理権の欠缺
訴訟要件であって職権調査事項である訴訟能力(行為能力)、法定代理権、訴訟代理権の欠缺があれば、追認がされない限り訴訟行為は無効となるため、裁判所は、期間を定めてその補正を命じなければなりません(民事訴訟法第34条)。
補正とは、本人や法定代理人による追認、法定代理権証明文書の提出などです。
遅滞のため損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、一時訴訟行為をさせることができます。
必要な授権を欠く者がした訴訟行為は、授権に至った当事者又は法定代理人(社団又は財団は代表者)の追認により、訴訟行為の時にさかのぼって効力を生じます。
追認の方式については定めがなく、口頭でも、黙示でもよいとされています。
(民事訴訟法第34条、家事事件手続法第17条第1項、家事事件手続法第第26条もこれを準用)
家事事件手続法の特則
調停事件
次の調停事件における次の者は、未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人であっても、法定代理人(の同意)によらず、自ら手続行為をすることができます。(家事事件手続法第252条)
調停事件 | 手続行為能力者 |
---|---|
夫婦間の協力扶助に関する処分 ※財産上の給付を求めるものは除く | 夫及び妻 |
子の監護に関する処分 ※財産上の給付を求めるものは除く | 子 |
養子の離婚後に親権者となるべき者の指定 | 養子、その父母及び養親 |
親権者の指定又は変更 | 子及びその父母 |
人事に関する訴えを提起することができる事項についての調停事件 婚姻の無効の訴え 婚姻の取消しの訴え 離婚の訴え 協議上の離婚の無効の訴え 協議上の離婚の取消しの訴え 婚姻関係の存否の確認の訴え 摘出否認の訴え 認知の訴え 認知の無効の訴え 認知の取消しの訴え 実親子関係の存否の確認の訴え 養子縁組の無効の訴え 養子縁組の取消しの訴え 離縁の訴え 協議上の離縁の無効の訴え 協議上の離縁の取消しの訴え 養親子関係の存否の確認の訴え | 人事訴訟行為をすることができることとなる者 |
審判事件
次の審判事件は、未成年者、成年被後見人となるべき者、成年被後見人、被保佐人、被補助人は、法定代理人(の同意)によらずに自ら手続行為をすることができます。(家事事件手続法第118条、第129条、第137条、第151条、第168条、第177条、第218条、第227条、第235条)
ただし、手続行為につき行為能力の制限を受けた者が手続行為をしようとする場合において、必要があると認めるときは、裁判長は、申立て又は職権により、弁護士を手続代理人に選任することができます。裁判長が選任した弁護士に制限能力者が支払うべき報酬の額は、裁判所が相当と認める額とされます。(家事事件手続法第23条)
- 後見・保佐・補助開始の審判事件
- 後見・保佐・補助開始の審判の取消しの審判事件
- 成年後見人・保佐人・補助人・未成年後見人の選任の審判事件
- 成年後見人・保佐人・補助人・未成年後見人の解任の審判事件
- 成年後見監督人・保佐監督人・未成年後見監督人の選任の審判事件
- 成年後見監督人・保佐監督人・未成年後見監督人の解任の審判事件
- 成年後見人・子・未成年監督人に関する特別代理人の選任の審判事件(子)
- 保佐人・補助人に対する代理権の付与の審判事件
- 保佐人・補助人に対する代理権の付与の取消しの審判事件
- 成年被後見人に宛てた郵便物又は信書便物の配達の嘱託及びその嘱託の取消し又は変更の審判事件
- 成年後見・保佐・補助・未成年後見の事務の監督の審判事件
- 第三者が成年被後見人・子・未成年被後見人に与えた財産の管理に関する処分の審判事件(子)
- 保佐人・補助人の同意を得なければならない行為の定めの審判事件
- 保佐人・補助人の同意に代わる許可の審判事件
- 保佐人・補助人の同意を得なければならない行為の定めの審判の取消しの審判事件
- 保佐人・補助人の同意を得なければならない行為の定めの取消しの審判事件
- 夫婦間の協力扶助に関する処分の審判事件(夫及び妻)
※財産上の給付を求めるものを除く - 子の監護に関する処分の審判事件(夫及び妻)
※財産上の給付を求めるものを除く - 親権喪失、親権停止、管理権喪失の審判の取消しの審判事件(子及びその父母)
- 養子の離縁後に親権者・未成年後見人となるべき者の指定の審判事件(親権者となるべき者については養子、その父母及び養親、未成年後見人となるべき者は未成年被後見人となるべき者及び養親)
- 親権者の指定又は変更の審判事件(子及びその父母)
- 任意後見契約の効力を発生させるための任意後見監督人の選任の審判事件
- 戸籍法に規定する審判事件
- 都道府県の措置についての承認の審判事件(児童を現に監護する者、児童に対し親権を行う者、児童に未成年後見人)
- 都道府県の措置の期間の更新についての承認の審判事件(児童を現に監護する者、児童に対し親権を行う者、児童に未成年後見人)
- 児童相談所長又は都道府県知事の引き続いての一時保護についての承認の審判事件(児童を現に監護する者、児童に対し親権を行う者、児童に未成年後見人)
- 児童並びに児童相談所長の申立てによる特別養子適格の確認の審判事件(児童及びその父母)
共同訴訟
要件
訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができます。(民事訴訟法38条)
共同訴訟人の地位
共同訴訟人の1人の訴訟行為、共同訴訟人の1人に対する相手方の訴訟行為及び共同訴訟人の1人について生じた事項は、他の共同訴訟人に影響を及ぼしません。(民事訴訟法39条)
必要的共同訴訟
訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には、その1人の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力を生じます。共同訴訟人の1人に対する相手方の訴訟行為は、全員に対してその効力を生じます。(民事訴訟法40条)
参加
訴訟の参加(人事訴訟含む)
補助参加
訴訟の結果について利害関係(補助参加の法的利益)を有する第三者は、当事者の一方を補助するため、その訴訟に参加することができます。(民事訴訟法42条)
訴訟の結果について利害関係(補助参加の法的利益)を有するかどうかとは、判決の判断によって参加人の法的地位が事実上不利な影響を受けるおそれがある関係があるかどうかです。
補助参加申出人が、被参加人から求償、損害賠償などの訴えを提起される関係にある場合は、訴訟の結果について利害関係を有するといえます。
高橋宏志『重点講義民事訴訟法(下) 第2版補訂版』439頁(有斐閣、2014年)
補助参加の申出
補助参加の申出は、参加の趣旨及び理由を明らかにして、補助参加により訴訟行為をすべき裁判所にしなければなりません。(民事訴訟法43条1項)
補助参加の申出は、補助参加人としてすることができる訴訟行為とともにすることができます。(民事訴訟法43条2項)
補助参加について、申出は書面でしなければならないとの特別の定めはないので、書面又は口頭ですることができます。口頭で申し出る場合は、裁判所書記官の面前で陳述しなければならず、裁判所書記官は、調書を作成して記名押印しなければなりません。(民事訴訟規則1条)
補助参加の申出書は、当事者双方に送達しなければなりません。(民事訴訟規則第20条第1項)
送達は申出者から提出された副本によってします(民事訴訟規則第20条第2項)。つまり、申出者は正本と副本の2通を裁判所に提出しなければなりません。
補助参加についての異議等
当事者が、弁論又は弁論準備手続において申述する前に補助参加について異議を述べたときは、裁判所は、補助参加の許否について決定で裁判をします。当事者からの異議があると、補助参加人は、参加の理由を疎明しなければなりません。(民事訴訟法44条)
補助参加について、当事者から異議が出されなければ、裁判所は補助参加の許否について裁判ができません。結局、当事者の異議さえなければ、補助参加の利益がない状態でも実行され、補助参加人が訴訟に関与してしまいます。
当事者から異議が出されなければ、補助参加の利益がない場合でも補助参加は実行され補助参加人が訴訟に関与してしまうのである。
引用元:高橋宏志『重点講義民事訴訟法(下) 第2版補訂版』426頁(有斐閣、2014年)
補助参加人の訴訟行為
補助参加人は、被参加人の訴訟行為と抵触しない範囲で、一切の訴訟行為をすることができます(例、訴訟について攻撃又は防御の方法の提出、異議の申立て、上訴の提起、再審の訴えの提起)。補助参加人の訴訟行為は、補助参加を許さない裁判が確定し当事者が援用するまで効力を有します。(民事訴訟法45条)
補助参加は、補助参加者が自ら請求をしたり、請求を受けたりすることではありません。このことから、従たる当事者とも呼ばれます。(『重点講義民事訴訟法(下) 第2版補訂版』425頁)
補助参加人に対する裁判の効力
補助参加に係る訴訟の裁判は、次の場合を除き、補助参加人に対してもその効力を有します。
- 補助参加の時における訴訟の程度に従い補助参加人が訴訟行為をすることができなかったとき
- 被参加人の訴訟行為と抵触し補助参加人の訴訟行為が効力を有しなかったとき
- 被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げたとき
- 被参加人が補助参加人のすることができない訴訟行為を故意又は過失によってしなかったとき
独立当事者参加
訴訟の結果によって権利が害されることを主張する第三者又は訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であることを主張する第三者は、その訴訟の当事者の双方又は一方を相手方として、書面による参加の申出によって、当事者としてその訴訟に参加することができます。(民事訴訟法47条)
独立当事者参加人の訴訟行為は全員の利益においてのみその効力を生じ、独立当事者参加人について訴訟手続の中断又は中止の原因があるときは、その中断又は中止は、全員についてその効力を生じます。
独立当事者参加人に対する相手方の訴訟行為は、全員に対してその効力が生じます。
申出については、補助参加と同様に、参加の趣旨及び理由を明らかにして、独立当事者参加により訴訟行為をすべき裁判所にしなければなりません。参加申出は、独立当事者参加人としてすることができる訴訟行為とともにすることができます。
訴訟脱退
独立当事者参加があった場合、参加前の原告又は被告は、相手方の承諾を得て訴訟から脱退することができます。判決は脱退した当事者に対しても効力を有します。(民事訴訟法48条)
共同訴訟参加
訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合には、その第三者は、共同訴訟人としてその訴訟に参加することができます。(民事訴訟法52条)
訴訟告知
当事者は、訴訟の係属中、訴訟告知の理由及び訴訟の程度を記載した書面を裁判所に提出して、参加することができる第三者にその訴訟の告知をすることができます。参加しなかった場合においても、補助参加人に対する裁判の効力が適用されます。(民事訴訟法53条)
家事事件の手続参加
当事者参加
当事者となる資格を有する者(離婚事案なら他方配偶者)は、申出により、当事者として家事審判の手続に参加することができます。また、家庭裁判所が相当と認めるときは、当事者の申立てにより又は職権で、他の当事者となる資格を有する者であって審判を受ける者となるべき者を、当事者として家事審判の手続に参加させることができます。
参加の申出及び申立ては、参加の趣旨及び理由を記載した書面でしなければなりません。
参加申出を却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができます。
利害関係参加
審判を受ける者となるべき者は、申出により、家事審判の手続に参加することができます。それ以外の者であっても、審判の結果により直接の影響を受ける者又は当事者となる資格を有する者は、家庭裁判所の許可を得て家事審判の手続に参加することができます。
家庭裁判所は、相当と認めるときは、職権で、審判を受ける者となるべき者及び審判の結果により直接の影響を受ける者又は当事者となる資格を有する者を家事審判の手続に参加させることができます。
参加の申出及び参加の許可の申立ては、参加の趣旨及び理由を記載した書面でしなければなりません。
家庭裁判所は、未成年者の場合、年齢及び発達の程度その他一切の事情を考慮して、未成年者の参加が未成年者の利益を害すると認めるときは却下しなければなりません。
参加の申出を却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができます。
利害関係参加人は、申立ての取下げ・変更、裁判に対する不服申立て・裁判所書記官の処分に対する意義の取下げを除いて、当事者がすることができる手続行為をすることができます。
人事訴訟における利害関係人の訴訟参加
人事訴訟においても、補助参加はすることができます。人事訴訟法第15条第3項で、補助参加の申出を前提とする規定があるからです。
補佐人
補佐人とは、裁判所の許可を得て、当事者、法定代理人、訴訟代理人とともに期日に出頭し、これらの者の陳述を補足する者です。専門的知識を要する陳述を補足させるために用いられることが多いとされています。(民事訴訟法第60条第1項、家事事件手続法27条もこれを準用)
補佐人の資格については特別の制限はありません。
裁判所の許可はいつでも取り消すことができます。(民事訴訟法第60条第2項、家事事件手続法27条もこれを準用)
補佐人は、当事者などがすることができる法律上及び事実上の一切の陳述をすることができ、当事者、法定代理人、訴訟代理人が直ちに取り消し、又は更正しないときは、当事者、法定代理人、訴訟代理人が自ら陳述したものとみなします。(民事訴訟法第60条第3項、家事事件手続法27条もこれを準用)
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