伊藤眞 (東京大学名誉教授)/著『民事訴訟法 第7版』(有斐閣、2020年)166頁
給付の訴え
給付の訴えとは、請求の内容として原告が被告に対する給付請求権を主張し、権利保護形式として裁判所が被告に対して給付義務の履行を命じる(給付判決)よう求める訴えです。
- 現在の給付の訴え:既に履行期の到来している給付請求権が主張される場合
- 将来の給付の訴え:履行期の到来していない給付請求権が主張される場合
給付判決が確定すると、給付請求権の存在が既判力をもって確定されるとともに、判決主文中の給付命令を実現するための執行力が認められます。
給付棄却判決は、執行力は認められないのはもちろん、給付請求権の不存在を確認する既判力が確定判決の効力として認められます。
確認の訴え
確認の訴えとは、原告が、権利関係の存在又は不存在の確認という権利保護形式で本案判決(確認判決)を求める訴えです。給付の訴えでも、形成の訴えでも、権利関係の存否が確定されることから、確認訴訟が最も基本的な類型と考えられています。
形成の訴え
形成の訴えとは、判決によって訴訟の目的たる権利関係の変動(発生若しくは消滅又は変更)を生じさせる宣言という権利保護形式での本案判決(形成判決)を求める訴えです。
離婚訴訟や株主総会決議取消訴訟、社員総会等決議取消訴訟などに代表されます。
原告は、法律関係の変動の要因となる法律要件(離婚なら婚姻関係と離婚原因)を主張し、法律関係の変動(離婚なら婚姻関係の消滅、離婚)を宣言する本案判決を求めます。
形成訴訟の訴訟物は、形成原因であり、判決は形成原因の存否を既判力をもって確定します。
形成の訴えにも、次の3類型があります。
- 実体法上の形成の訴え(婚姻無効又は取消し、離婚、嫡出性の否認、認知、合併無効、会社の設立無効、株主総会決議取消しなど)
- 訴訟法上の形成の訴え(確定判決の変更を求める訴え、再審の訴え、請求異議の訴え、第三者異議の訴え、配当異議の訴え)
- 形成的形成の訴え(共有物分割の訴え、父を定める訴え、土地境界確定の訴え)
※法律関係の変動を目的とするが、形成原因又は形成権が存在しない訴えであり、実質は非訟事件といえる。
※訴訟物たる権利関係が存在しないため、訴訟物が私的自治の原則が妥当することに根拠を持つ処分権主義及び弁論主義は妥当しない。
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