送達は、次のような場面で行われます。
- 訴状の被告への送達(民事訴訟法138条1項)
- 期日の呼出し(呼出状の送達)
- 原告の請求の変更(民事訴訟法143条)
- 判決書(民事訴訟法255条)
- 控訴状(民事訴訟法289条)
- 支払督促(民事訴訟法388条)
- 支払督促の仮執行宣言(民事訴訟法391条)
送達概論
送達は裁判所書記官の職権で行い、通常は郵便業務従事者を送達者とする郵便により、住所において行われます。
再送達上申書(休日送達の上申書、就業場所送達の上申書、執行官送達の上申書、書留郵便に付する送達の上申書、交付送達申立書)も参考にしてください。(参考書式1、参考書式2)
住所等への送達ができなければ就業場所に送達し、本人が受け取らなければ同居人や就業場所の従業者等に補充送達ができます。補充送達を受領しないのであれば、就業場所を除いて差置送達が可能です。
被告が受け取らないようであれば、実際に住んでいることを調査したうえで付郵便送達の上申書を提出し、付郵便送達をしてもらいます。
戸籍謄本等の交付の請求をすることができる者は、次のとおりです。(戸籍法第10条以下)
- 戸籍に記載されている者・その配偶者、直系尊属、直系卑属
- 戸籍から除かれた者・その配偶者、直系尊属、直系卑属
- 省略
戸籍の附票は、住所の履歴が記載されているもので、本籍地の市町村で保管されています。(住民基本台帳法第16条以下、住所については住民基本台帳法第17条第3号)
戸籍の附票の写しの交付請求をすることができる者は、次のとおりです。(住民基本台帳法第20条、特に第3項)
- 戸籍の附票に記載されている者(本籍がある者)
- 戸籍の附票から除かれた者
- 記載者と除かれた者の配偶者
- 記載者と除かれた者の直系尊属
- 記載者と除かれた者の直系卑属
- 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の附票の記載事項を確認する必要がある者からの必要である旨の申出を相当と認めるとき
- 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある者からの必要である旨の申出を相当と認めるとき(おそらく、行政権を行使しない裁判所は含まれない)
- 戸籍の附票の記載事項を利用する正当な理由がある者からの必要である旨の申出を相当と認めるとき
- 特定事務受任者から、受任事件・事務の依頼者が前項各号の者に該当することを理由として必要な旨の申出があり、かつ、申出を相当と認めるとき
- 弁護士
- 司法書士
- 土地家屋調査士
- 税理士
- 社会保険労務士
- 弁理士
- 海事代理士
- 行政書士
つまり他人の戸籍の附票を調べるためには、権利義務のための必要性又は正当な理由が相当と認められる必要があります。個人でも請求できますが、弁護士等に依頼することもできます。
以前の住所に手紙などを送って、転送先まで追跡サービスで追跡して最寄りの支局を探す方法もあります。
所有している不動産について、土地や家屋の登記事項証明書を取得する方法もあります。
ただし、暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがある配偶者からの暴力を受けた者(配偶者暴力防止法第1条第2項)、更に反復してつきまとい等をされるおそれがあるストーカー行為等の被害者、再び児童虐待を受けるおそれがある児童虐待を受けた児童その他これに準ずる者は、市区町村に住民基本台帳事務における支援措置申出書を提出することにより、閲覧制限をかけることができます。
なお、原告がDV等支援措置の対象となっているため被告等の住所を調査することができない事情を報告する資料を提出する場合には、裁判所は、当事者の特定や被告に対する訴状等の送達場所等の特定のため、市区町村に対し、被告等の住所に関する調査嘱託を行うことが考えられるとしています。
市区町村は、加害者から裁判所に提出する必要があるとの理由により被害者の住民票の写し等の交付の請求があり、加害者の請求に特別の必要があると認められる場合には、裁判所に直接、住民票の写し等を交付する等の方法によるのではなく、裁判所からの調査嘱託に対応する方法によることとされています。
住民基本台帳事務処理要領 第5 その他 10 住民基本台帳の一部の写しの閲覧及び住民票の写し等の交付並びに戸籍の附票の写しの交付におけるドメスティック・バイオレンス、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の保護のための措置
市町村長は、ドメスティック・バイオレンス、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の加害者が、住民基本台帳の一部の写しの閲覧及び住民票の写し等の交付並びに戸籍の附票の写しの交付(以下「住民基本台帳の閲覧等」という。)の制度を不当に利用してそれらの行為の被害者の住所を探索することを防止し、もって被害者の保護を図ることを目的として、(中略)次の措置を講ずるものとする。
ア 申出の受付
(ア) 申出者
市町村長は、その備える住民基本台帳に記録又はその作成する戸籍の附票に記載されている者で、次に掲げる者から、コに掲げる支援措置の実施を求める旨の申出を受け付ける。
A 配偶者暴力防止法第1条第2項に規定する被害者であり、かつ、暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがあるもの
B ストーカー規制法第7条に規定するストーカー行為等の被害者であり、かつ、更に反復してつきまとい等をされるおそれがあるもの
C 児童虐待防止法第2条に規定する児童虐待を受けた児童である被害者であり、かつ、再び児童虐待を受けるおそれがあるもの又は監護等を受けることに支障が生じるおそれがあるもの
D その他AからCまでに掲げるものに準ずるもの
(イ) 申出者と同一の住所を有する者
市町村長は、申出者が、その同一の住所を有する者について、申出者と併せて支援措置を実施することを求める場合には、その旨の申出を併せて受け付ける。
(中略)
イ 支援の必要性の確認
(ア) 申出者
当初受付市町村長は、申出者が、ア-(ア)に掲げる者に該当し、かつ、加害者が、当該申出者の住所を探索する目的で、住民基本台帳の閲覧等を行うおそれがあると認められるかどうかについて、警察、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所等の意見を聴取し、又は裁判所の発行する保護命令決定書の写し若しくはストーカー規制法に基づく警告等実施書面等の提出を求めることにより確認する。
この場合において、市町村長は、上記以外の適切な方法がある場合には、その方法により確認することとしても差し支えない。
(中略)
カ 支援措置の期間
支援措置の期間は、いずれの市町村における支援措置についても、ウに基づき当初受付市
町村長が確認の結果を申出者に連絡した日から起算して一年とする。
キ 支援措置の延長
当初受付市町村長は、支援措置の期間終了の一月前から、支援措置の延長の申出を受ける
ものとし、申出があった場合には、イからオまでの例により処理する。延長後の支援措置の期間は、いずれの市町村における支援措置についても、延長前の支援措置の期間の終了日の翌日から起算して一年とする。
ク 支援措置の終了
市町村長は、次のいずれかに該当する場合には、支援措置を終了する。
A 支援対象者から支援の終了を求める旨の申出を受けたとき
なお、当該終了の申出は、当初受付市町村長がアの例により受け付け、他の市町村長に
おいても支援を行っている場合には、当該他の市町村長に支援の終了を求める旨の申出
があった旨を連絡する。
B 支援措置の期間を経過し、延長がなされなかったとき
C その他市町村長が支援の必要性がなくなったと認めるとき
なお、他の市町村長においても支援を行っている場合には、当該他の市町村長に支援の
必要性がなくなったと認めた旨を連絡する。
コ 支援措置
(ア) 住民基本台帳の一部の写しの閲覧の申出に係る支援措置
(筆者注釈:住民票の写しの交付ではなく閲覧である)
A 市町村長は、支援対象者に係る住民基本台帳の一部の写しの閲覧について、以下のように取り扱う。
(A) 加害者が判明しており、加害者から申出がなされる場合(閲覧者、閲覧事項取扱者
の中に、加害者が含まれている場合を含む。)
法第11条の2第1項各号に掲げる活動に該当しないとして申出を拒否する。
(筆者注釈:市町村長は、訴訟の提起その他特別の事情による居住関係の確認として市町村長が定めるものの実施などの活動を行うために閲覧することが必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、申出書等に、その活動に必要な限度において、閲覧させることができる。)
(C) その他の第三者から申出がなされた場合
加害者が第三者になりすまして行う申出に対し閲覧させることがないよう、十分留意して厳格に本人確認を行うことが適当である。
また、加害者の依頼を受けた第三者からの閲覧に対し閲覧させることがないよう、利用の目的等について十分留意して厳格な審査を行うことが適当である。
なお、加害者が国又は地方公共団体の機関の職員になりすまして閲覧を請求することも考えられるため、法第11条に基づく請求であっても、閲覧者については、十分留意して厳格に本人確認を行うことが適当である。
(中略)
(イ) 住民票の写し等及び戸籍の附票の写しの交付の請求又は申出に係る支援措置
市町村長は、支援対象者に係る住民票(世帯を単位とする住民票を作成している場合にあっては、支援対象者に係る部分。また、消除された住民票及び改製前の住民票を含む。)の写し等及び戸籍の附票(支援対象者に係る部分。また、消除された戸籍の附票及び改製前の戸籍の附票を含む。)の写しの交付について、以下のように取り扱う。
(A) 加害者が判明しており、加害者から請求又は申出がなされた場合
不当な目的があるものとして請求を拒否し、又は法第12条の3第1項各号に掲げる者
に該当しないとして申出を拒否する。
ただし、(ア)-A-(C)に準じて請求事由又は利用目的をより厳格に審査した結果、請求又は申出に特別の必要があると認められる場合には、交付する必要がある機関等から交付請求を受ける、加害者の了解を得て交付する必要がある機関等に市町村長が交付する、又は支援対象者から交付請求を受けるなどの方法により、加害者に交付せず目的を達成することが望ましい。
(B) 支援対象者本人から請求がなされた場合
加害者が支援対象者本人になりすまして行う請求に対する交付を防ぐため、代理人若しくは使者又は郵便等による請求を認めないこととする。ただし、特別の必要がある場合には、あらかじめ代理人又は使者を支援対象者と取り決める、支援対象者に確認をとるなどの措置を講じた上で、請求を認めることとする。また、第2-4-(1)-①-ア-(イ)に準じて本人確認をより厳格に行う。ただし、市町村長が当該措置を不要と認める者については、この限りでない。
(C) その他の第三者から申出がなされた場合
加害者が第三者になりすまして行う申出に対する交付を防ぐため、第2-4-(1)-①-ア-(イ)に準じて本人確認をより厳格に行う。また、加害者の依頼を受けた第三者からの申出に対する交付を防ぐため、(ア)-A-(C)に準じて利用目的についてもより厳格な審査を行う。ただし、市町村長がこれらの措置を不要と認める者については、この限りでない。
(略)
車のナンバーがわかれば、運輸支局に問い合わせてみるのもよいかもしれません。
住所等や就業場所が調査してもわからない場合は、公示送達が可能な場合があります。
状況 | 送達場所・方法 |
---|---|
基本 (103条1項) | 住所、居所、営業所又は事務所 (住所等) |
住所等が知れないとき 住所等において送達をするのに支障があるとき 就業場所において送達を受ける旨の申述をしたとき (103条2項) | 就業場所 |
送達場所を届け出た場合 (104条2項) | 届出場所 |
出会送達 国内に住所等を有することが明らかでない者 送達場所の届出をした者が拒まないとき (105条) | その者に出会った場所 郵便窓口(や書記官室?) |
補充送達 就業場所以外の送達場所で出会わないとき (106条1項) | 従業者や同居者であって相当のわきまえのある者 郵便窓口 |
補充送達 就業場所において送達を受けるべき者に出会わない場合 (106条2項) | 就業場所の従業者であって相当のわきまえのあるものが拒まないときはその者 |
差置送達 本人又は相当のわきまえのある者が受領を拒んだとき (106条3項) | 送達場所に書類を差し置く ※就業場所は差置送達不可 |
付郵便送達 補充送達と差置送達ができない場合 (107条) | 住所等、就業場所、届出場所いずれか |
外国においてすべき送達 (108条) | 裁判長が以下に嘱託する 1 その国の管轄官庁 2 その国に駐在する日本の大使・公使・領事 |
送達の概要
職権送達の原則等
送達は、特別の定めがある場合を除いて裁判所書記官の職権で行います。(民事訴訟法第98条)
送達実施機関
送達は特別の定めがある場合を除いて郵便又は執行官によって行いますが、郵便による送達については、郵便の業務に従事する者を送達者とします。(民事訴訟法第99条)
交付送達の原則
送達は、特別の定めがある場合を除き、送達を受けるべき者に送達すべき書類を交付してします。(民事訴訟法101条)
訴訟無能力者等に対する送達
訴訟無能力者に対する送達は、その法定代理人にします。数人が共同して代理権を行うべき場合には1人に送達すれば足り、刑事施設に収容されている者に対しては刑事施設の長にします。(民事訴訟法102条)
送達報告書
送達者は、書面を作成し送達に関する事項を記載し裁判所に提出しなければなりません。(民事訴訟法109条)
送達の種類
裁判所書記官による送達
裁判所書記官は、所属裁判所の事件について出頭した者に対して自ら送達をすることができます。(民事訴訟法100条)
公示送達
公示送達の要件
次の場合は、裁判所書記官は、申立てにより公示送達をすることができます。
- 当事者の住所・居所その他送達をすべき場所が知れない場合
※通常人が誠実に探索調査しても、送達をすべき場所が判明しないという客観的事情が認められる場合。最後の住所等はどこで、その住所に居住しておらず、就業場所がないか、就業場所が判明しないことを証明しなければならない。(参考) - 書留郵便に付する送達をすることができない場合
- 外国においてすべき送達について、裁判長がその国の管轄官庁又はその国に駐在する日本の大使・公使・領事に嘱託することができず、又はこれによっても送達をすることができないと認めるべき場合
- 外国の管轄官庁に嘱託を発した後6月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合
上記の場合、裁判所は、訴訟の遅滞を避けるため必要があると認めるときは、申立てがないときであっても、裁判所書記官に公示送達をすべきことを命ずることができます。
同一の当事者に対する2回目以降の公示送達は、外国の管轄官庁に嘱託を発した後6月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合を除き、職権ですることになります。
公示送達の方法
公示送達は、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨を裁判所の掲示板に掲示してします。(民事訴訟法111条)
公示送達の効力発生の時期
区分 | 効力発生時期 |
---|---|
原則 | 掲示を始めた日から2週間を経過すること |
同一の当事者に対する2回目以降の公示送達 | 掲示を始めた日の翌日 |
外国においてすべき送達についてした公示送達 | 掲示を始めた日から6週間を経過すること |
公示送達による意思表示の到達
訴訟の当事者が相手方の所在を知ることができない場合において、相手方に対する公示送達がされた書類にその相手方に対しその訴訟の目的である請求又は防御の方法に関する意思表示をする旨の記載があるときは、その意思表示は、掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなします。
ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力は生じません。
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