相続財産清算の意義・性質
銀行・貸金業者、個人借入先、クレジット会社、買掛先、賃貸人、受遺者などの利害関係人は、相続人の法定相続分に応じて債権を行使することができる(民法第902条の2)ため、相続人がわからなければ相続人の調査をしましょう。相続人がいなければ、家庭裁判所に請求をして清算手続の中で弁済を受けます。
相続人がいなければ相続債権者や受遺者の請求により相続財産清算人が請求の申出を催告する公告をして、公告期間が満了したら競売して弁済し、残った財産は国庫に帰属します。
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は法人(民法第951条)となり、相続債権者や受遺者など利害関係人からの請求により、家庭裁判所は、清算のために相続財産の保存・管理行為(民法第103条)や財産目録の作成(民法第953条が民法第27条を準用)などをする相続財産清算人を選任します(民法第952条)。
なお、相続財産清算人の報酬は相続財産から支弁します。(民法第953条が民法第29条を準用)
相続財産清算人が選任されたら、その旨と6か月以上の期間で相続権主張催告の公告が官報によってされます(民法第952条)。また、相続財産清算人は全ての相続債権者と受遺者に対して2か月以上の期間を定めて請求の申出を催告する公告を官報に掲載して公告します(民法第957条)。
公告期間満了後、相続財産清算人は、相続財産をもって申出相続債権者に債権額の割合に応じて、弁済期前でも(民法第957条第2項が請求の申出をすべき旨の公告をした場合について民法第930条を準用)弁済し(民法第957条第2項が請求の申出をすべき旨の公告をした場合について民法第929条を準用)、その後に受遺者に弁済(民法第957条第2項が請求の申出をすべき旨の公告をした場合について民法第931条を準用)をします。
弁済するために必要があるときは、相続財産を競売して換価します。(民法第957条第2項が請求の申出をすべき旨の公告をした場合について民法第932条を準用)
期間内に申出をせず、相続財産清算人に知れない相続債権者及び受遺者は、残余財産についてのみその権利を行使できます(民法第957条第2項が請求の申出をすべき旨の公告をした場合について民法第935条を準用)が、相続人が現れなかった場合は、権利の行使はできません(民法第958条)。
相続財産は、特別縁故者が相続権主張期間満了後3か月以内に請求した場合は分与後の財産にいて、国庫に帰属します(民法第959条)。
相続財産法人
成立原因
相続人全員が承継者とならないなど、相続人のあることが明らかでないとき(原因)は、相続財産は、法人となります。(民法第951条)
不成立原因
相続人のあることが明らかになったときは、相続財産法人は成立しなかったものとみなします。ただし、相続財産清算人が権限内でした行為の効力は妨げられません(民法第955条)。
相続人が相続の承認をした時は、清算人の代理権は消滅します。相続財産清算人は、遅滞なく相続人に対して清算に係る計算をしなければなりません(民法第956条)。
相続財産法人の清算の開始原因(相続財産清算人の選任の原因)
相続財産(法人)の清算の開始原因は、相続人のあることが明らかでないときに、利害関係人(又は検察官)から請求があったときです。(民法第952条第1項)
相続財産清算人の選任の効果
選任及び相続権主張催告の公告
家庭裁判所は、清算人を選任したときは、清算人を選任した旨及び相続人があるならば6か月以上の一定の期間内に相続権を主張すべき旨を、官報に掲載することにより、公告しなければなりません。(民法第952条)
相続財産清算人の職務遂行
相続財産目録の作成
相続財産清算人は、相続財産から費用を支弁して管理すべき財産の目録を作成しなければなりません(民法第953条が民法第27条を準用)。
相続財産保存処分命令の履行
家庭裁判所は、相続財産清算人に対し、相続財産の保存に必要と認める処分を命ずることができます(民法第953条が民法第27条を準用)。
清算を目的とする保存・管理行為
相続財産清算人は、保存行為、相続財産管理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内においてその清算を目的とする行為のみ権限を有し(民法第103条)、権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができます(民法第953条が民法第28条を準用)。
立担保命令の履行
家庭裁判所は、相続財産清算人に相続財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができます(民法第953条が民法第29条を準用)。
報酬の受領
家庭裁判所は、相続財産清算人と相続財産との関係その他の事情により、被相続人の財産の中から相当な報酬を相続財産清算人に与えることができます(民法第953条が民法第29条を準用)。
相続財産状況報告義務
相続財産清算人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、請求者に相続財産の状況を報告しなければなりません(民法第954条)。
請求申出催告の公告
相続権主張催告の公告があったときは、相続財産清算人は、全ての相続債権者及び受遺者に対し、相続権主張期間内に、2か月以上の期間を定めて、その期間内に請求の申出をすべき旨を、期間内に申出をしないときは弁済から除斥されるべき旨(限定承認者は知れている相続債権者及び受遺者を除斥することはできない)を付記して(民法第957条第2項が請求の申出をすべき旨の公告について民法第927条第2項を準用)、官報に掲載することにより(民法第957条第2項が請求の申出をすべき旨の公告について民法第927条第3項を準用)公告しなければなりません(民法第957条第1項)。
相続債権者及び受遺者への個別の催告
限定承認者(相続財産清算人)は、知れている相続債権者及び受遺者には、各別に請求の申出の催告をしなければなりません(民法第957条第2項が請求の申出をすべき旨の公告について民法第927条第4項を準用)。
公告期間満了前の弁済拒絶
限定承認者(相続財産清算人)は、請求の申出をすべき旨の公告期間が満了するまで、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができます(民法第957条第2項が請求の申出をすべき旨の公告をした場合について民法第928条を準用)。
公告期間終了の効果
公告期間満了後の弁済
請求の申出をすべき旨の公告期間が満了した後は、限定承認者(相続財産清算人)は、相続財産をもって、その期間内に申出相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければなりません。
ただし、優先権(担保権)を有する債権者の権利を害することはできません。
(民法第957条第2項が請求の申出をすべき旨の公告をした場合について民法第929条を準用)
期限前の債務の弁済
限定承認者(相続財産清算人)は、弁済期に至らない債権であっても、弁済をしなければなりません。条件付きの債権又は存続期間の不確定な債権は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って弁済をしなければなりません(民法第957条第2項が請求の申出をすべき旨の公告をした場合について民法第930条を準用)。
受遺者に対する弁済
限定承認者(相続財産清算人)は、相続債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができません(民法第957条第2項が請求の申出をすべき旨の公告をした場合について民法第931条を準用)。
弁済のための相続財産の換価
弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者(相続財産清算人)は、競売に付さなければなりません(限定承認の場合は限定承認者が鑑定人の評価に従い価額弁済すると競売を止めることができます)(民法第957条第2項が請求の申出をすべき旨の公告をした場合について民法第932条を準用)。
相続債権者及び受遺者は、自己の費用で、相続財産の競売又は鑑定に参加することができます(民法第957条第2項が請求の申出をすべき旨の公告をした場合について民法第933条を準用)。
不当弁済責任
限定承認者(相続財産清算人)は、公告若しくは催告をすることを怠り、又は期間内に相続債権者若しくは受遺者に弁済をしたことによって他の相続債権者若しくは受遺者に弁済をすることができなくなったとき、その他弁済規定に違反したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(詳細省略)(民法第957条第2項が請求の申出をすべき旨の公告をした場合について民法第934条を準用)。
公告期間内に申出をしなかった相続債権者及び受遺者の地位
期間内に申出をしなかった相続債権者及び受遺者で限定承認者(相続財産清算人)に知れなかったものは、特別担保を有する者を除き、残余財産についてのみその権利を行使することができます(民法第957条第2項が請求の申出をすべき旨の公告をした場合について民法第935条を準用)。
相続権を主張する者がいない場合の相続債権者及び受遺者の地位
相続権主張期間内に相続権を主張する者がいないときは、(相続人並びに)相続財産の清算人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使することができません(民法第958条)。
特別縁故者に対する相続財産の分与
家庭裁判所が相当と認めるときは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の相続権主張期間の満了後3か月以内にしなければならない請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができます(民法第958条の2)。
国庫帰属
処分されなかった相続財産は、国庫に帰属します。相続財産の清算人は、遅滞なく清算に係る計算をしなければなりません(民法第959条)。
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