共有とは?意義・性質、権利義務関係を解説!

共有 物権
共有

共有の意義・性質

共有とは、1つの物に対する1の所有権を、数人が共同して有する状態です(通説・判例=所有権量的分属説、単一説)(大判大正8年11月3日民録25輯1944頁、大判大正13年5月19日民集3巻211頁、最判昭和46年10月7日民集25巻7号885頁)。

1つの物に対して、所有権は1つしか存在しえないという考え方に基づきます。

所有権は、法令の制限内において、自由に所有物の使用、収益、処分をすることができる権利です(民法第206条)。しかし、他にも共有者がいるため1人で所有物を処分することはできず、使用や管理にも制限があります

(共有)持分の意義・性質

(共有)持分とは、持分権又は持分権の量的割合のことです。条文では、持分権の量的割合の意味で使用されていることが多くなっています。通説・判例である所有権量的分属説によれば、共有持分は1つの所有権の量的一部です。

平野裕之 著『物権法[第2版]』(日本評論社、2022年)355頁

共有の発生原因

共有の発生原因は主に共同相続ですが、共同購入、共同での無主物先占、付合、混和なども考えられます。また、夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定されます。(民法第762条第2項

平野裕之 著『物権法[第2版]』(日本評論社、2022年)349頁

共有者の権利義務関係

法律行為具体例内部関係対外関係根拠条文
負担除草費用
管理人報酬
不法占有者排除費用
固定資産税
都市計画税
717条の損害賠償金
各共有者は、持分に応じて、維持費や改良費、固定資産税・都市計画税などの共有物に関する負担をする。

1年以内に負担義務を履行しない共有者に対しては、その共有者の持分価格(相当の償金)を支払って、持分を取得することができる(共有持分買取権)。
民法第253条
使用使用者は、善管注意義務を負い、持分範囲内の使用をすることができるが、持分を超える使用をする場合は、別段の合意がある場合を除いて、その対価(賃料相当額)の償還義務がある。

他の共有者は、使用共有者に対して、別段の合意がある場合を除いて、持分を超える使用の対価(賃料相当額)の償還を請求する権利がある。

使用共有者にも権原があるため、原則、明渡し請求はできない。(最判昭和41年5月19日民集20巻5号947頁
共有者は、第三者に対して、自己の持分に基づき、単独で、妨害排除請求権を行使することができる。民法第249条
処分・変更捨てる・食べる(消費)
共有者間で設定した使用方法の変更
※管理事項となる説はあるか?
売買
贈与
抵当権の設定
根抵当権の元本確定請求
使用貸借
※反対する共有者の使用収益権を補償なく奪うものであるため
5年超えの土地の賃貸借権その他の使用及び収益を目的とする権利の設定
※変更にあたる
秋山靖浩 伊藤栄寿 大場浩之 水津太郎 著『物権法[第3版]』(日本評論社、2022年)165頁
3年超えの建物の賃貸借権その他の使用及び収益を目的とする権利の設定
※変更にあたる
秋山靖浩 伊藤栄寿 大場浩之 水津太郎 著『物権法[第3版]』(日本評論社、2022年)165頁
6か月超えの動産の賃貸借権その他の使用及び収益を目的とする権利の設定
※変更にあたる
秋山靖浩 伊藤栄寿 大場浩之 水津太郎 著『物権法[第3版]』(日本評論社、2022年)165頁
賃料変更(東京地判平成14年7月16日金法1673号54頁)
※管理事項となる説はあるか?
物理的な損傷
土地の造成
建物の建築・増築
用途の変更
大規模な改修・建替え
共有物の処分(譲渡、贈与、担保物権の設定、用益物権の設定)又は形状・効用に著しい変更を伴う変更は、全共有者の同意が必要。共有者は、第三者に対して、自己の持分に基づき、単独で、妨害排除請求権及び原状回復請求権を行使することができる。(最判平成10年3月24日集民187号485頁民法第251条
管理使用者の決定
管理者の選任
管理者の解任
防犯カメラの設置
修繕
※一般的には保存行為といわれるが、費用によっては管理行為にあたると考える
5年以内の定期借地契約
3年以内の定期借家契約
6か月以下の動産の賃貸借権
共有土地の賃借権の譲渡の承諾
※特段の事情がない限り、共有者に格別の不利益を与えるものではない(東京地判平成8年9月18日判時1609号120頁)
使用収益権の設定の解除(最判昭和39年2月25日民集18巻2号329頁)
庭木の剪定
平野裕之 著『物権法[第2版]』(日本評論社、2022年)362頁
ペンキの塗替え
平野裕之 著『物権法[第2版]』(日本評論社、2022年)362頁
賃貸借契約の解除・更新拒絶
修繕(費用による)、短期用益物権の設定、用益物権の設定の解除などの共有物の管理は、持分価格の過半数で決する。

合意・過半数にもよらなかった場合はどうなる?
民法第252条前文
保存明渡し請求
引渡し請求
無権原の登記上所有者に対する抹消請求
不当な差押えがされた場合の第三者異議訴訟(参考
雑草取り
掃除
雨漏りの修理
相続人全員の登記
妨害排除請求などの保存行為は、共有者が、単独ですることができる。

保存行為をしなかった場合はどうなる?
民法第252条第5項

共有物の使用についての権利義務関係(占有権原)

共有者は、共有物の全部について(他人の所有物でもあるので)善良な管理者の注意その人の社会的・経済的な地位に応じて求められる注意義務をもって(民法第249条第3項)、持分に応じた使用(占有等)をすることができます民法第249条第1項)。別段の合意がある場合を除いて、使用共有者は自己の持分を超える使用の対価を他の共有者に償還しなければなりません自己の持分割合に応じて占有部分に係る賃料相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することができる。(最判平成12年4月7日判時1713号50頁民法第249条第2項)。

共有物を使用する共有者が少数持分権者判決書より、持分の価格が共有物の価格の過半数に満たない者であっても、使用共有者は自己の持分によって共有物を使用収益する権原けんげんと読む。行為をするのに法律上正当とされるための根拠となる原因。を有しており、その権原に基づいて共有物を使用するものであるため、多数持分権者が使用共有者に対して当然には明渡しを請求することはできません。少なくとも、明渡しを求める理由の主張立証が必要です。(最判昭和41年5月19日民集20巻5号947頁

もっとも、多数持分権者が管理事項として現に使用していない共有者を使用者として決めることができ、この決した管理事項に基づいて明渡しを求めることはできます。(秋山靖浩 伊藤栄寿 大場浩之 水津太郎 著『物権法[第3版]』(日本評論社、2022年)164頁

管理事項に違反して占有している場合には、明渡し請求に理由があるといえるでしょう。

次のような場合には、持分を超える使用の対価の償還(不当利得返還請求)が認められない可能性があります

  • 共有者間の合意により共有者の1人が共有物を単独で使用する旨を定めた場合の、その合意により単独使用を認められた共有者による単独使用
    最判平成10年2月26日民集52巻1号255頁
    • 相続開始前から被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、その2人の間に死亡後も遺産分割により所有関係が確定するまでは、引き続き同居相続人に無償で使用させる旨の合意があったと推認される(最判平成8年12月17日民集50巻10号2778頁
    • 内縁の夫婦の共有不動産を居住・事業用として共同で使用してきたときは、特段の事情のない限り、両者の間において、その一方が死亡した後は、他方が不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認する(最判平成10年2月26日民集52巻1号255頁

共有者ではない第三者が廃棄物を投棄しているとき、共有物を使用(不法占有)しているとき、共有者は、共有持分に基づき、保存行為として単独で第三者に対して明渡しや引渡し(返還)などの妨害排除請求権を行使することができます。抹消登記請求も同様です。(大判大正7年4月19日民録24輯731頁最判昭和31年5月10日民集10巻5号487頁

秋山靖浩 伊藤栄寿 大場浩之 水津太郎 著『物権法[第3版]』(日本評論社、2022年)168頁

共有物の処分についての権利義務関係

共有物自体の処分は、全共有者の同意が必要です。各共有持分の処分は本人しかできないことからして、当然といえます。(民法・不動産登記法部会資料 27『共有制度の見直し』

自己の持分の放棄に関して、詳しくは後述しています。

変更と同様の取扱いになると考えます。

共有持分の処分

共有物の変更についての権利義務関係

共有物に変更を加えることは、共有者全員の合意が必要です。(民法第251条第1項)

他の共有者又はその所在を知ることができないときは、共有物を全く管理・活用できないという支障(消極損害)も生じ得るため、裁判所に、その者を除く共有者全員の同意をもって共有物に変更することの許可を受けることができます。(民法第251条第2項)

他の共有者・第三者を問わず、共有者全員の合意に基づかず共有物を物理的に損傷・改変するなど変更行為がされている場合、共有者は、各自の共有持分に基づいて(侵害された)変更行為の全部の禁止(妨害排除請求)、原状回復を求めることができます。(最判平成10年3月24日集民187号485頁

共有物の管理についての権利義務関係

どのような行為が共有者の持分の価格の過半数の同意を得ればすることができるかどうか判然としないため、足りる行為でも慎重を期して全員の同意を得ることがあり、共有地の適切な利用が阻害されているとの指摘がありました。そこで規律の明確化が図られました。

民法・不動産登記法部会資料 1「民法・不動産登記法の改正に当たっての検討課題」

共有物の形状又は効用に著しい変更を伴わない物理的な変更であっても、共有物の改良を目的とし、著しく多額の費用を要しない変更は各共有者の持分価格の過半数で決するとしても共有者に与える影響は小さいと考えられるため、そのように規定しようとした経緯があります。(民法・不動産登記法部会資料 27『共有制度の見直し』)、管理者の選任・解任を含む共有物の管理事項(共有物の性質を変えることなく、原状維持、利用、改良すること)は、共有物を使用する共有者がいるかどうかにかかわらず、各共有者の持分の価格の過半数で決します。(民法第252条第1項)

短期賃借権の設定(土地は5年、建物は3年、動産は6か月以下)は、上記の持分価格の過半数によって設定することができます民法第252条第4項)。長期間の使用権の設定は処分と同じであり、少数持分権者の使用・収益が長期間にわたって制約されるため妥当でないとの意見に基づくものです。(民法・不動産登記法部会資料 27、6頁)

ただし、借地借家法の適用がある賃貸借は、変更にあたる(共有者全員の合意が必要)と考えられています。(参考
石田穣 著『物権法 民法大系2』(信山社、2008年)382頁
秋山靖浩 伊藤栄寿 大場浩之 水津太郎 著『物権法[第3版]』(日本評論社、2022年)165頁
平野裕之 著『物権法[第2版]』(日本評論社、2022年)363頁

共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければなりません。他の共有者において、ある共有者が占有することについて明示又は黙示の合意があるケースに、本規定によって占有共有者に対する救済が図られます。(民法第252条第3項)

共有物を使用する共有者は少数持分権者であって、その生活の本拠や生計の手段となっていることがありますが、共有物の使用を開始するだけで、いわば早い者勝ちを許す結果になることも懸念されたこと、共有不動産の利用促進が限定的にならざるを得ないことなどの理由から、共有物を使用する共有者がいるいないにかかわらず過半数で決することとなりました。

この問題については、「特別の影響」がある場合は承諾を要するものとされ、結果的には裁判所が「特別の影響」について判断し救済を図るものと思われます。また、このような救済については、当然に明渡し請求をすることができず、明渡しの理由を主張立証しなければならないという判例(最判昭和41年5月19日民集20巻5号947頁)が明文化されたものともされています。(民法・不動産登記法部会資料 27『共有制度の見直し』

他の共有者又はその所在を知ることができないとき、相当の期間(概ね2週間を想定)を定めて管理事項決定の賛否を明らかにすべき旨を催告しその期間内に賛否が明らかにされなかったときは、裁判所に、その者を除く過半数をもって共有物に管理実行の決定の許可を受けることができます。

共有物の管理に関する合意形成に意見を述べない共有者の扱いについては、その共有者は他の共有者の過半数に同意すると擬制し、その共有者を除く過半数で合意形成する扱いも考えられたものの、その手続は慎重であるべきであるため、裁判所の決定によることと改められました。

共有者に意見を聴いて利用すべきであり、共有者間の調整を経ずに裁判所から意見を求められる事態も望ましくないため、まずは催告を求めることが要求されています。

催告における相当の期間は、後に裁判所から意見を求められることを踏まえて明確な下限は設けられていません。基本的には、返答に応じることを検討する期間であり、おおむね2週間程度と想定されています。

民法・不動産登記法部会資料56「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する要綱案(案) (1)」

共有物の管理者制度は、令和3年の民法改正によって創設されました。(考え方は試案と同じ)

共有物の管理について、共有者以外の第三者に、変更を除く各共有者の過半数の同意による一定の範囲内の管理を任せるようにできることとし、共有物の円滑な管理を図る規定だと思われます。

修繕のための請負契約の締結、賃貸借契約の締結などが想定されています。そのような契約の当事者は、当事者間の合意で決まること、管理者に対して共有者を名義人とする契約締結権限自体を付与するものではないことから、管理者と第三者の名で契約を締結することとなります。

その他、管理者制度についての検討は省略。詳しくは試案、部会資料27など

変更と異なり、管理は必要な行為であり、全員の同意が必要とすると管理行為をすることが困難となるおそれがあります。また、適切な管理ができない場合は、それこそ持分の侵害ともいえるでしょう。

一方で、単独で行おうとするとやはり他の共有者の持分を侵害することになるため、基準として持分価格の過半数で管理行為ができるものとされたものと考えられます。

共有物の保存(管理)についての権利義務関係

妨害排除請求などの保存行為は、単独ですることができます。(民法第252条第5項)

共有物の負担についての権利義務関係

各共有者は、持分に応じて管理費用その他共有物に関する負担を負います。費用立替者から償還の催告=遅滞の責任を負う時(解釈1解釈2)から1年以内に負担義務を履行しない共有者に対しては、その共有者の持分価格(相当の償金)を支払って、持分を取得することができます(共有持分買取請求権)。(民法第253条

共有物に関して負担をしないのに果実の帰属を主張することは許されるべきではありません。ゆえに負担義務を履行しない共有者は、果実の帰属について他の共有者に対抗することができなくなるべきです。

したがって他の共有者の意思のみによって、持分を吸収することができるようにしたというのが第2項の趣旨だと解します。

共有持分買取請求権は形成権ですが、持分の取得のためには相当の償金を支払うことが必要です。

共有持分買取請求権の行使において、持分の一部取得は許されません。(大審院明治42年2月25日判決民録15輯158頁

共有物の分割

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共有物に関する登記

持分の譲渡は、登記をしなければ第三者に対抗することはできません。(大判大正5年12月27日民録22巻2524頁傍論)

登記がなければ、第三者に不分割契約を対抗することができません。(不動産登記法第59条第6号、権利に関する登記事項)

共有者の1人が単独所有の登記をしている場合、登記名義人の持分に関する限りにおいて有効であるため、他の共有者は、更正は求められますが、全部抹消請求はできません。(最判昭和38年2月22日民集17巻1号235頁最判昭和44年5月29日集民95号421頁最判昭和59年4月24日集民141号603頁

鎌田薫 著『民法ノート 物権法1[第4版]』(日本評論社、2022年)234頁

譲渡人から無権原の第三者に所有権移転登記があり、無権原の第三者が登記名義人となっているとき、共有者は、単独でその移転登記の全部抹消登記手続を請求することができます。他の共有者の持分について不実な持分移転登記があった場合でも、共有物に対する侵害に他ならないため、各共有者は、単独で抹消登記手続を請求することができます。(最判平成15年7月11日民集57巻7号787頁)

秋山靖浩 伊藤栄寿 大場浩之 水津太郎 著『物権法[第3版]』(日本評論社、2022年)168頁

共有と固定資産税

相続・包括遺贈があった場合は、相続人は、被相続人・包括遺贈者の地方団体の徴収金を納付・納入しなければなりません(地方税法第9条第1項)。共同相続の場合は、各相続人は相続分によりあん分して計算した額を納付・納入しなければなりません地方税法第9条第2項)。

共有物等に対する地方団体の徴収金は、納税者(共有者)が連帯して納付する義務(連帯納付義務)を負います地方税法第10条の2第1項)。

納税義務は相続・包括遺贈により相続人に承継し、共同相続人は連帯納付義務を負います。

固定資産税の納税義務者は、固定資産の所有者(地方税法第343条第1項)であり、土地又は家屋については、登記簿に所有者として登記されている者(地方税法第343条第2項前段)です。

登記簿の所有者が賦課期日(1月1日、地方税法第359条)前に死亡しているときは、同日において土地又は家屋を現に所有している者となります(地方税法第343条第2項後段)。

市町村長は、登記簿に所有者として登記されている個人が死亡している場合における現所有者に、市町村の条例で定めるところにより、現所有者であることを知った日の翌日から3月を経過した日以後の日までに、現所有者の住所及び氏名又は名称その他固定資産税の賦課徴収に関し必要な事項を申告させることができます。(地方税法第384条の3、なお税制改正の趣旨については「令和2年度税制改正について>地方税法等の改正」(主税局総務課課長補佐 竹中 良)を参照)

つまり死亡年内に相続登記をした場合、翌年度以降の納税通知書は新所有者(登記上の筆頭者)に送付されます。死亡年内に相続登記をしなかった場合、市町村によっては条例により現所有者であることを知った日の翌日から3か月以内に現所有者申告書の提出が義務付けられている場合があり、提出すると新たな納税義務者・代表者が認定されます。共有の場合は連帯です。以後、代表者に納税通知書が送付されることになります。

「相続があったとき」(東京都主税局)

総有と合有

共有のほかに、総有や合有といった概念もあるので紹介しておきます。

総有

総有とは、構成員全員に財産が帰属し、構成員の固有財産とは独立した財産関係です。権利能力なき社団の財産関係は、社団を構成する総社員の総有とされています。(最判昭和32年11月14日民集11巻12号1943頁最判昭和39年10月15日民集18巻8号1671頁

総有の共同所有者は、物の利用権は存するものの、構成員の持分(債務についての個人的責任)は否定されています。管理も通常は一部の者に委ねられます。

なお、権利能力なき社団とは、多数決の原則が行われる団体であり、構成員の変更にもかかわらず団体が存続し、組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものとされています。(最判昭和39年10月15日民集18巻8号1671頁

合有

一方で、権利能力なき社団の財産については合有説などもあります。

合有とは、共同所有でありながら、何らかの目的のために各共有者の持分が拘束され、持分処分の自由や分割請求が否定される状態です。

民法上の組合の財産は、共有と規定(民法668条)されながら組合員の持分の処分や債権の行使の自由、分割請求の自由を制限(民法676条)しているため、合有とされます。

組合財産は、特定の目的のために各組合員の固有財産とは別に一団を為して存する特別財産であり、目的の範囲内ではある程度の独立性があるため、組合員の固有財産と混同しないといわれています。(最判昭和43年6月27日判時524号52頁)

合有財産は、構成員から独立した財産であり、持分ではなく構成員の過半数で管理事項を決します(民法第670条第1項)。

相続財産も合有説が一部あるものの、共有と規定(民法898条)され、最高裁も通常の共有と性質を異にするものではないとの立場です。(最判昭和30年5月31日民集9巻6号793頁

平野裕之 著『物権法[第2版]』(日本評論社、2022年)352頁

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