年金分割とは?

年金

年金分割とは、離婚等(離婚・婚姻の取消し・事実婚の解消)をしてから2年以内に、婚姻期間中の標準報酬総額(再評価後)の合計額に対する按分割合に基づき、年金事務所に標準報酬改定請求書を提出して標準報酬額を按分することができる制度です。

年金分割制度は、標準報酬(厚生年金の報酬比例部分)の財産分与制度といえます。単純に言うと、もらえる厚生年金を公平に分ける制度です。

なお、平成20年4月1日以降に婚姻した夫婦は、(元)配偶者按分割合50%が保障される3号分割の請求をおすすめします。合意分割を請求しても、被扶養配偶者であった期間のうち平成20年4月1日以降の期間は、3号分割の請求があったものとみなされます。

もっとも、令和3年度においては、全体の98.0%が按分割合50%でした。(厚生年金保険・国民年金事業年報 令和3年度 29頁

厚生年金保険法78条の2

厚生年金保険法施行令3条の12の2

厚生年金保険法施行規則78条

https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/5-1.pdf

基本的に、日本年金機構が作成した上記パンフレットをよく読んでおけばOKです。

合意分割制度

当事者

婚姻期間中の標準報酬額の合計額(再評価後)が多い方を第1号改定者、少ない方を第2号改定者と呼びます。

たとえば、会社員の(元)配偶者は第1号改定者、専業主婦・主夫やパート・アルバイトをしていた(元)配偶者は第2号改定者です。

対象期間

合意分割の対象となるのは、離婚・婚姻の取消し・事実婚の解消までの期間です。

  • 離婚をした場合、婚姻が成立した日から離婚が成立した日までの期間
  • 婚姻の取消しをした場合:婚姻が成立した日から婚姻が取り消された日までの期間
  • 婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった場合:被扶養配偶者であった期間(事実婚第3号被保険者期間)

厚生年金保険法施行規則78条の2

按分割合の決め方

按分割合は夫婦の話し合いで決めることが前提ですが、合意できなければ家庭裁判所に調停を申し立てて合意を目指し、調停でも合意できなければ裁判官が審判をします。離婚訴訟の附帯処分として、裁判官に決めてもらうことも可能です。

  1. (元)夫婦での話し合い(協議)
  2. 調停での合意(和解含む)
  3. 審判
  4. 離婚訴訟の附帯処分(判決)

厚生年金保険法78条の2 2項

年金分割の割合を定める調停・審判

年金分割の割合を定める審判は、請求すべき按分割合に関する処分として、家事事件手続法の別表第2の16項に規定されています。

調停(審判)手続を利用するには、情報通知書1通につき1,200円分の収入印紙と、連絡用の郵便切手が必要です。連絡用の郵便切手は、東京家庭裁判所は合計3,320円分、名古屋家庭裁判所は合計2,986円分とされています。

また、調停を申し立てる際には後述する年金分割のための情報通知書が必要です。

調停不成立になると、自動的に審判に移行するので必ず結果が出ます。

離婚訴訟の附帯処分

離婚訴訟においても、附帯処分を申し立てることにより、離婚を認容する判決をする際は、家庭裁判所が請求すべき按分割合を定めてくれます。(人事訴訟法32条

このときも、後述する年金分割のための情報通知書を添付しなければなりません。(人事訴訟規則19条3項

附帯処分については離婚訴訟の記事を参照。

年金分割のための情報提供請求

按分割合を決めるにあたっては、対象期間標準報酬総額や請求できる按分割合の範囲などの情報を知っておかなければなりません。

請求できる按分割合の範囲は、2人の対象期間標準報酬総額(対象期間の各月の標準報酬月額+標準賞与額のことで、再評価後)の合計額に占める第2号改定者の対象期間標準報酬総額の割合を超え、かつ50%以下だからです。

たとえば、共働きであった場合、既に2号改定者の婚姻期間中の標準報酬額の合計額が全体の40%を占めている場合があり、この場合には40%以下で按分割合を決めることはできません。

対象期間に係る被保険者期間は、初日の属する月が被保険者期間であるときはその月を算入し、末日の属する月が被保険者期間であるときはその月を算入しません。(厚生年金保険法施行令3条の12の4

対象期間標準報酬総額の計算にあたり、対象期間の標準報酬総額は、平成15年3月以前は1.3、平成15年4月以後は再評価率を乗じて再評価をすることになります。(厚生年金保険法3条の12の5

厚生年金保険法78条の3

そこで、合意分割を行うために必要な情報を、年金分割のための情報通知書として年金事務所から交付を受けることができます。年金分割のための情報通知書の交付を受けるには、基礎年金番号通知書もしくは年金手帳またはマイナンバーカードと、発行から6か月以内の戸籍全部事項証明書を持参し、年金事務所に年金分割のための情報提供請求書を提出しましょう。

情報提供の請求は1人でも可能です。年金分割のための情報通知書は、共同請求時はそれぞれに交付、1人請求は離婚後ならそれぞれに交付、婚姻中なら請求者のみに交付されます。(参考

郵送交付は2~3週間で自宅に届くことになるので、調停や離婚訴訟における附帯処分の申し立てなど、必要なタイミングに応じて余裕を持った請求をすることがおすすめです。

厚生年金保険法78条の4

合意分割の請求

合意分割の請求は、離婚後に、基礎年金番号通知書もしくは年金手帳、戸籍全部事項証明書、年金分割の割合を明らかにすることができる書類を持参し、日本年金機構事務所で標準報酬改定請求書を提出して行います

年金分割の割合を明らかにすることができる書類は次のとおりです。

  • 合意した場合
  • 裁判所手続によって定めた場合
    • 審判書若しくは判決書の謄本又は抄本と確定証明書
      ※住所又は氏名の秘匿決定を受けた場合は秘匿事項届出書謄本と秘匿決定謄本も
    • 調停調書若しくは解調書の謄本又は抄本
      ※住所又は氏名の秘匿決定を受けた場合は秘匿事項届出書謄本と秘匿決定謄本も

合意書の場合は、離婚後であっても2人(代理人可)がそろって年金事務所に出向かなければなりません。

厚生年金保険法施行規則78条の4

標準報酬の改定

標準報酬の改定は、次のようにされます。標準賞与額も同じです。

  • 第1号改定者:対象期間の各月ごとに、標準報酬月額×(1-改定割合)
  • 第2号改定者:対象期間の各月ごとに、標準報酬月額+標準報酬月額*改定割合

厚生年金保険法78条の6

標準報酬改定通知書

標準報酬分割改定がされると、標準報酬改定通知書が交付されます。(参考

3号分割制度

被扶養配偶者は、離婚等をすると、被扶養者期間(特定期間)について標準報酬の改定請求ができます。3号分割では、按分割合が合意分割における最大の50%に固定されています。

按分割合は固定されているので、当事者間の合意は不要です。ただし、対象期間は平成20年4月1日以降に被扶養配偶者であった期間に限られるので注意しておきましょう。

合意分割を請求した場合でも、3号分割の対象となる期間が含まれているときは、3合分かつの請求があったものとみなされます

厚生年金保険法78条の14

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