ふるさと納税とは?
ふるさと納税とは、自分で選んだ都道府県や市区町村など地方公共団体に対する寄附金のうち、原則として自己負担額(控除適用下限額)2,000円を超えた部分が所得税や住民税の控除対象となる制度です。
一般的には自治体からの返礼品を目的として寄附します。
そのため、実質的には所得税や住民税などの税金を前払いしながら、2,000円の自己負担で返礼品を購入できるお得な制度です。
なお、寄附は本人名義の寄附しか認められていません(国税庁)。
控除の仕組み
ふるさと納税で税金を前払いできるのは、所得税の寄附金控除、住民税の寄附金税額控除が適用されるためです。
所得税の寄附金控除
寄附金控除とは、国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対して特定寄附金を支出した場合に受けられる所得控除です。
ふるさと納税は、地方公共団体に対する寄附金に該当します。
寄附金控除の控除額の計算式
総所得金額等の40%を上限としてその年中に支出した特定寄附金の額の合計額-2,000円
総所得金額等の40%が上限ですが、住民税特例分の上限のほうが厳しい場合が多いため、特に気にする必要はありません。
10,000円寄附した場合、8,000円だけ所得税の課税所得が減る仕組みです。
寄附金控除を受けるためには
寄附金控除を受けるためには、寄附金控除に関する事項を記載した確定申告書に寄附金の受領証(領収書)を添付または提示しなければなりません。
確定申告書作成コーナーではなく手書きで確定申告書を作成する場合は次のとおりです。
- 確定申告書第一表28欄に寄附金控除額を記載
例)18,000円 - 確定申告書第二表「寄附金控除に関する事項(28)欄」に寄附先の所在地と名称、寄附金を記入する
例)◯◯市 20,000円 - (確定申告書第二表「住民税・事業税に関する事項」欄に、寄附額(特例控除対象)を記入する)
例)20,000円
確定申告書作成コーナーの場合は次の流れです。
- 寄附金控除の欄で「入力する」
- 証明書等の入力画面で「入力する」
- 寄附年月日と寄附金の種類、支出した寄附金の金額、寄附先の所在地、寄附先の名称を入力
- 「入力内容の確認」
- 「次へ進む」
確定申告書作成コーナーの場合、寄附先の所在地や名称はリスト選択によって自動入力、寄附金控除額も自動計算・入力されるため便利です。
令和3年分の確定申告から、ふるさと納税に限り、特定事業者が発行する年間寄附額を記載した「寄附金控除に関する証明書(記載例)」を添付できるようになりました(国税庁)。
複数の市区町村にふるさと納税をしても、ふるさと納税サイト(特定事業者)が発行する1枚の証明書だけで確定申告できる点が便利です。
特定事業者とは地方公共団体と仲介契約を締結している事業者のことで、国税庁長官が指定した事業者です(国税庁)。
- ふるなび
- さとふる
- 楽天ふるさと納税
- ふるさとチョイス
- ふるさとパレット
- ふるさとプレミアム
- ふるさとプラス
- セゾンのふるさと納税
- ANAのふるさと納税
- ふるさと本舗
- 三越伊勢丹ふるさと納税
- JALふるさと納税
- au PAYふるさと納税
- ふるラボ
- ふるさと納税ニッポン!
- G-Callふるさと納税
寄附金控除に関する証明書は、ふるさと納税サイトによりますが、マイナポータル連携(おすすめ)やポータルサイトからダウンロードするほか、郵送などの方法で発行を受けられます。
総所得金額等とは?
総所得金額等とは、次の所得の合計額を指します。
- 事業所得・不動産所得・給与所得・総合課税の利子所得・配当所得・短期譲渡所得・雑所得の合計額(損益通算後)
- 総合課税の長期譲渡所得と一時所得の合計額(損益通算後)の2分の1の金額
- 純損失や雑損失、その他各種損失の繰越控除後の総所得金額
- 特別控除前の分離課税の譲渡所得
- 株式等に係る譲渡所得等(申告分離課税)
- 上場株式等に係る配当所得(申告分離課税とした場合)
- 原則として総合課税の配当所得で、その年分の課税総所得金額等が1,000万円以下の場合には配当所得の10%(一定のETFを含む)または5%(証券投資信託)の配当控除(税額控除)を受けられる。
※確定申告をする場合には合計所得金額や総所得金額等に含まれるため注意する - 20.315%の源泉徴収をされるので確定申告不要を選択できる
- 上場株式等の譲渡損失との損益通算のために20.315%の申告分離課税を選択することもできる。
※確定申告をする場合には合計所得金額や総所得金額等に含まれるため注意する
- 原則として総合課税の配当所得で、その年分の課税総所得金額等が1,000万円以下の場合には配当所得の10%(一定のETFを含む)または5%(証券投資信託)の配当控除(税額控除)を受けられる。
- 先物取引に係る雑所得等(原則として申告分離課税20.315%)
- 山林所得
- 退職所得
多くの人の場合、「事業所得+不動産所得+給与所得+雑所得」のように所得を合計した金額です。
しかし次のような人は注意してください。
- 株式・ETFや投資信託、国債、社債などを取引していて損益通算や繰越控除の適用を受けるために申告分離課税を選択した人(確定申告した人)
- 先物・オプション・CFD・FXの取引をした人
- 退職をした人
- マイホームなどの不動産を売却した人
住民税の寄附金税額控除
住民税の寄附金税額控除もほとんど所得税の寄附金控除と同じですが、ふるさと納税のみ適用できる特例控除額もあります。
- 基本控除額:(総所得金額等の30%を上限とした対象寄附金合計額-2,000円)×10%
- 特例控除額:(ふるさと納税の合計額-2,000円)×特例控除率(90%-所得税の税率×1.021)
※特例控除額は、所得割額から調整控除額を差し引いた額の20%が限度
※特例控除率は、厳密には「住民税の課税総所得金額-人的控除差調整額」に応じて決められている
特例控除によって、寄附額のうち2,000円を超えた部分全額が控除される仕組みです。
住民税の寄附金税額控除を受けるためには、所得税の確定申告書第二表「住民税に関する事項」欄に必要事項を記載し、受領証等を添付して税務署へ申告します。
確定申告書を提出しない場合には住民税の申告が必要です。
ふるさと納税をするといつ税金が安くなるのか?
2023年にふるさと納税をして2024年3月15日までに確定申告をすると、所得税は控除分だけ課税所得が下がり、税額が抑えられます。給与所得者の場合は還付を受けられる場合もあるでしょう。
住民税は2024年6月以降に納付する額が抑えられます。
ワンストップ特例申請書を提出した場合、所得税は減りませんが、その分は住民税で減る形です。
ふるさと納税の寄附上限額(全額控除される寄附額)
ふるさと納税の寄附額をあまりにも大きくすると2,000円を超えた部分について全額控除されないため、ただの寄附(高い買い物)になってしまいます。
10,000円のふるさと納税をして2,000円の負担となるはずが、税金は減らずに10,000円で返礼品を買うことになったという場合です。
全額控除される寄附額は、家族構成や社会保険の適用状況、iDeCoや生命保険・地震保険の加入状況、医療費控除など個人によって異なるため、一概に示すのは困難です。
そのため、総務省が公表している資料を参考にしつつ、少し余裕を持って寄附額を決めることをおすすめします。
ただし給与所得者向けの資料なので、詳細計算したい場合はふるさとチョイスや楽天ふるさと納税のシミュレーションを利用するのがおすすめです。
より確実なのは、市区町村の役所に直接聞いてみることです。
もっとも、ふるさと納税はまだ所得が確定していない時点で行わなければならないため、あくまでも目安としてしか提示できません。
特例控除額が所得割額から調整控除額を差し引いた額の20%以下
参考程度に、寄附額の上限を求める式を紹介します。
(ふるさと納税の合計額-2,000円)×特例控除率(90%-所得税の税率×1.021)≦(所得割額-調整控除額)×20%
この式を簡単にすると次のようになります。
{(所得割額-調整控除額)×20%}/{90%-(所得税の税率×1.021)}+2,000円
所得割額は家族構成や社会保険の適用状況、iDeCoや生命保険・地震保険の加入状況、医療費控除など個人によってまったく異なるものです。
言ってしまえば住民税を計算しなければわかりません。
ふるさと納税のデメリット
ふるさと納税をする前に、次のデメリットを押さえておいてください。
ふるさと納税制度の問題点は、日本経済新聞の「膨らむ経費、消える税収5000億円」という記事が詳しいです。(2024年6月11日付け日本経済新聞朝刊26ページ)
まだ支払わなくても良い税金を前払いすることになる
納税者としてのデメリットは、税金を前払いする形になるため、その分だけ手元のお金が早くなくなってしまうことです。
もっとも、預貯金としてお金を置いておくよりは有効なお金の使い方です。
単純に比較するのは難しいですが、ほとんどリスク(不確実性)がなくリターンを得られる点では、他の資産運用(投資)手段と比べてもふるさと納税は優秀といえます。
低所得者はふるさと納税の恩恵を十分に受けられない
住民税の所得割額がそもそも少ない人(低所得者)は、ふるさと納税の恩恵を十分に受けられません。
仮に低所得者がふるさと納税で得をしようとしても、全額控除されるふるさと納税額は低額だからです。
高所得者はふるさと納税を使って2,000円の自己負担でカニを食べられますが、低所得者はそうではありません。
市区町村が損をして行政サービスの低下につながるおそれがある
ふるさと納税の制度は、納税者にとって改悪に向かう可能性もあります。
納税者にとっては2,000円で返礼品を買えるお得な制度ですが、市区町村からすれば損な制度です。ふるさと納税サイトに掲載されるための費用や返礼品の送料負担も少なくないでしょう。
実際に東京都世田谷区は、ふるさと納税で87億円を超える財源が流出しているとされています。
ワンストップ特例制度は本来所得税が抑えられる分を住民税から抑えることになるため、これも市区町村の負担です。
ふるさと納税の影響で大都市は毎年数十億円以上の税収減となる。寄付額に応じて寄付者の住民税が控除されるためで、練馬区は24年度に51億円の減収を見込む。予算編成で財源が足りず、基金取り崩しで補った。「少子高齢化で社会保障費など歳出が右肩上がりのなか厳しい。地方税は住民サービスの対価という趣旨を逸脱している」と同区財政担当者は批判する。
引用元:2024年6月11日付け日本経済新聞朝刊26ページ
寄付が地域のために使われず経費で消える
東京都練馬区の財政担当者は、「寄付が地域のために使われず経費で消えるのは問題だ」と指摘します。以下のような経費の割合は、全体で46.8%といわれ、自治体には寄付の半額しか残らないそうです。
- 返礼品の調達
- 返礼品の送付
- 広告・寄付の仲介ポータルサイト手数料
日経新聞は、これを「返礼品ありきの寄付集めの弊害」と表現。返礼品調達費は、農家や漁師など地元事業者の売上になるとしても、返礼品の送付や手数料は地域との関連が薄いことが問題です。
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