民事保全(仮差押え)とは?

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民事保全総論

民事保全は、訴訟の前哨戦ともいえるでしょう。また、民事保全の決定により、相手方から和解を引き出して紛争を解決するといった方法も考えられます。

民事保全の意義・性質

民事保全とは、次の処分の総称です。(民事保全法第1条

  • 民事訴訟の本案の権利の実現を保全するための仮差押え
  • 民事訴訟の本案の権利の実現を保全するための係争物に関する仮処分
  • 民事訴訟の本案の権利関係につき仮の地位を定めるための仮処分
項目内容
保全命令の機関裁判所(民事保全法第2条第1項
保全執行の機関(裁判所)執行裁判所又は執行官(民事保全法第2条第2項
任意的口頭弁論口頭弁論を経ずに裁判をすることができる(民事保全法第3条
担保の提供の場所保全命令をした裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所(民事保全法第4条第1項
担保の提供の方法当事者が特別の契約をしたときは特別の契約により、特別の契約がなければ金銭等を供託する方法民事保全法第4条第1項
※銀行等との間に支払保証委託契約を締結する方法によって立てることもできる。(民事保全規則第2条
担保権利者の優先権訴訟費用に関し、供託した金銭等について、他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有する(民事保全法第4条第2項民事訴訟法第77条を準用)
担保の取消し以下のとき、裁判所は、申立てにより、担保の取消しの決定をしなければならない(民事保全法第4条第2項民事訴訟法第79条を準用)
・担保を立てた者が担保の事由が消滅したことを証明したとき(1項)
・担保の取消しについて担保権利者の同意を得たことを証明したとき(2項)
・訴訟の完結後裁判所が担保を立てた者の申立てにより担保権利者に対し一定の期間内にその権利を行使すべき旨を催告し担保権利者がその行使をしないとき(3項、担保の取消しについて担保権利者の同意があったものとみなす)
事件記録保全命令に関する手続又は保全執行に関し裁判所が行う手続について、利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し、事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
ただし、債権者以外の者にあっては、保全命令の申立てに関し口頭弁論若しくは債務者を呼び出す審尋の期日の指定があり、又は債務者に対する保全命令の送達があるまでの間は、この限りではない
民事保全法第5条
専属管轄この法律に規定する裁判所の管轄は、専属とする。(民事保全法第6条
管轄・本案の管轄裁判所
・仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所
※仮に差し押さえるべき物又は係争物が金銭債権であるときは、金銭債権は、第三債務者の普通裁判籍の所在地にあるものとする。(4項本文)
※仮に差し押さえるべき物又は係争物が動産の引渡しを目的とする債権及び物上の担保権により担保される債権は、その物の所在地にあるものとする。(4項)
民事保全法第12条

一般的には、銀行が保証書を発行する場合、保証希望額までの定期預金が必要です。(参考

損保ジャパン日本興亜は、一定の弁護士委任事件に限り、一定の保証料を支払うことで、支払保証委託契約を締結することができます。

担保の取消しの決定に対しては、即時抗告をすることができます。(民事保全法第4条第2項民事訴訟法第79条第4項を準用)

保全命令に関する手続

(釈明処分の特例)
民事保全法第9条 裁判所は、争いに係る事実関係に関し、当事者の主張を明瞭にさせる必要があるときは、口頭弁論又は審尋の期日において、当事者のため事務を処理し、又は補助する者で、裁判所が相当と認めるものに陳述をさせることができる。

申立て及び疎明

保全命令の申立ては、その趣旨並びに保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を明らかにして、これをしなければなりません。保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は、疎明しなければなりません。(民事保全法第13条

  • 保全命令申立ての趣旨
    ※債権者の債務者に対する上記請求債権の執行を保全するため,債務者の第三債務者に対する別紙仮差押債権目録記載の債権は, 仮に差し押さえる。
    第三債務者は, 債務者に対し, 仮差押えに係る債務の支払をしてはならない。
    との裁判を求める。
  • 保全すべき権利又は権利関係(疎明しなければならない)
  • 保全の必要性(疎明しなければならない)
    ※請求したが、全く支払をしない。(疎明方法として報告書)
    ※訴訟を提起すべく準備中である。(疎明方法として報告書)
    ※このまま推移すれば、財産をいつ処分するやもしれない状況にある。(現在の債務者の生活状況からすれば、いつ払戻しされるかも分からない状況にある。)
    ※今のうちに仮差押えをしておかなければ、後日、債権者が本案訴訟において勝訴判決を得ても、その執行が不能あるいは著しく困難となるおそれがある(民事保全法第20条第1項

申立ての手数料は2,000円、予納郵便切手は「1,099円×債務者数+(529円+575円+260円)×法務局数又は第三債務者数」です。不動産登記全部事項証明書、固定資産評価証明書も必要となります。

書式は、東京簡易裁判所

申立て後、債権者面接が実施(本人確認資料、申立書作成時に使用した印鑑、疎明資料原本を持参)され、担保決定がされ、供託所に担保金を供託し、供託所とその写しを裁判所に提出し(立担保証明)、保全決定がされ、保全決定正本を窓口で交付(交付送達)され、第三債務者に保全決定正本の送達がされ、その後に保全決定正本が送達されます。(東京簡易裁判所大阪地方裁判所

保全命令の担保

保全命令は、担保を立てさせて、若しくは相当と認める一定の期間内に担保を立てることを保全執行の実施の条件として、又は担保を立てさせないで発することができます。(民事保全法第14条第1項

  • 保全執行の実施は担保を立てることを条件として保全命令を発する
  • 保全執行の実施は相当と認める一定の期間内に担保を立てることが条件として保全命令を発する
  • 担保を立てさせないで保全命令を発する

担保を立てる場合において、遅滞なく供託所に供託することが困難な事由があるときは、裁判所の許可を得て、債権者の住所地又は事務所の所在地その他裁判所が相当と認める地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に供託することができます。(民事保全法第14条第2項

「裁判官が無担保を保全決定を発するのは非常に限られた場合である。」「ほとんどすべての事案において、裁判所は、担保を立てさせて保全決定を発している。」といわれています。
「民事保全に関する頻出質問集」15頁(カンボジア王立裁判官・検察官養成校民事教育改善プロジェクト)

担保金は、勝訴可能性に応じ、請求金額の10~20%程度といわれています。(参考1、)

裁判長の権限

保全命令は、急迫の事情があるときに限り、裁判長が発することができます。(民事保全法第15条

決定の理由

保全命令の申立てについての決定には、理由を付さなければなりません。ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足ります。(民事保全法第16条

送達

保全命令は、当事者に送達しなければなりません。(民事保全法第17条

保全命令の申立ての取下げ

保全命令の申立てを取り下げるには、保全異議又は保全取消しの申立てがあった後においても、債務者の同意を得ることを要しません。(民事保全法第18条

却下の裁判に対する即時抗告

保全命令の申立てを却下する裁判に対しては、債権者は、告知を受けた日から2週間の不変期間内に、即時抗告をすることができます(民事保全法第19条第1項)。

即時抗告の決定には、理由を付さなければなりません。ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足ります。(民事保全法第19条第3項民事保全法第16条を準用)

即時抗告を却下する裁判に対しては、更に抗告をすることができません(民事保全法第19条第2項)。

仮差押命令

必要性

仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができます。(民事保全法第20条第1項

仮差押命令は、前項の債権が条件付又は期限付である場合においても、これを発することができます。(民事保全法第20条第2項

対象

仮差押命令は、特定の物について発しなければなりません。ただし、動産の仮差押命令は、目的物を特定しないで発することができます。(民事保全法第21条

仮差押解放金

仮差押命令においては、仮差押えの執行の停止を得るため、又は既にした仮差押えの執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を定めなければなりません。(民事保全法第22条第1項

前項の金銭の供託は、仮差押命令を発した裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければなりません。(民事保全法第22条第2項

仮処分命令

必要性

係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができます。(民事保全法第23条第1項

仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができます。(民事保全法第23条第2項

仮の地位を定める仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができません。ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでありません。(民事保全法第23条第4項

仮処分命令は、債権が条件付又は期限付である場合においても、これを発することができます。(民事保全法第23条第3項民事保全法第20条第2項を準用)

仮処分の方法

裁判所は、仮処分命令の申立ての目的を達するため、債務者に対し一定の行為を命じ、若しくは禁止し、若しくは給付を命じ、又は保管人に目的物を保管させる処分その他の必要な処分をすることができます。(民事保全法第24条

仮処分解放金

裁判所は、保全すべき権利が金銭の支払を受けることをもってその行使の目的を達することができるものであるときに限り、債権者の意見を聴いて、仮処分の執行の停止を得るため、又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を仮処分命令において定めることができる。(民事保全法第25条第1項

前項の金銭の供託は、仮差押命令を発した裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければなりません。(民事保全法第25条第1項民事保全法第22条第2項を準用)

債務者を特定しないで発する占有移転禁止の仮処分命令

占有移転禁止の仮処分命令(係争物の引渡し又は明渡しの請求権を保全するための仮処分命令のうち、次に掲げる事項を内容とするものをいう。以下この条、第54条の2及び第62条において同じ。)であって、係争物が不動産であるものについては、その執行前に債務者を特定することを困難とする特別の事情があるときは、裁判所は、債務者を特定しないで、これを発することができる。(民事保全法第25条の2第1項

  • 債務者に対し、係争物の占有の移転を禁止し、及び係争物の占有を解いて執行官に引き渡すべきことを命ずること。
  • 執行官に、係争物の保管をさせ、かつ、債務者が係争物の占有の移転を禁止されている旨及び執行官が係争物を保管している旨を公示させること。

2 前項の規定による占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたときは、当該執行によって係争物である不動産の占有を解かれた者が、債務者となる。

3 第1項の規定による占有移転禁止の仮処分命令は、第43条第2項の期間内にその執行がされなかったときは、債務者に対して送達することを要しない。この場合において、第4条第2項において準用する民事訴訟法第79条第1項の規定による担保の取消しの決定で第14条第1項の規定により立てさせた担保に係るものは、裁判所が相当と認める方法で申立人に告知することによって、その効力を生ずる。

保全異議

保全異議の申立て


民事保全法第26条

保全命令に対しては、債務者は、その命令を発した裁判所に保全異議を申し立てることができる。

保全執行の停止の裁判等

民事保全法第27条

保全異議の申立てがあった場合において、保全命令の取消しの原因となることが明らかな事情及び保全執行により償うことができない損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったときに限り、裁判所は、申立てにより、保全異議の申立てについての決定において第3項の規定による裁判をするまでの間、担保を立てさせて、又は担保を立てることを条件として保全執行の停止又は既にした執行処分の取消しを命ずることができる。

2 抗告裁判所が保全命令を発した場合において、事件の記録が原裁判所に存するときは、その裁判所も、前項の規定による裁判をすることができる。

3 裁判所は、保全異議の申立てについての決定において、既にした第1項の規定による裁判を取り消し、変更し、又は認可しなければならない。

4 第1項及び前項の規定による裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

5 第15条の規定は、第1項の規定による裁判について準用する。

事件の移送

民事保全法第28条

裁判所は、当事者、尋問を受けるべき証人及び審尋を受けるべき参考人の住所その他の事情を考慮して、保全異議事件につき著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るために必要があるときは、申立てにより又は職権で、当該保全命令事件につき管轄権を有する他の裁判所に事件を移送することができる。

保全異議の審理

民事保全法第29条

裁判所は、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、保全異議の申立てについての決定をすることができない。

審理の終結

民事保全法第31条

裁判所は、審理を終結するには、相当の猶予期間を置いて、審理を終結する日を決定しなければならない。ただし、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日においては、直ちに審理を終結する旨を宣言することができる。

保全異議の申立てについての決定

民事保全法第32条

裁判所は、保全異議の申立てについての決定においては、保全命令を認可し、変更し、又は取り消さなければならない。

2 裁判所は、前項の決定において、相当と認める一定の期間内に債権者が担保を立てること又は第14条第1項の規定による担保の額を増加した上、相当と認める一定の期間内に債権者がその増加額につき担保を立てることを保全執行の実施又は続行の条件とする旨を定めることができる。

3 裁判所は、第1項の規定による保全命令を取り消す決定について、債務者が担保を立てることを条件とすることができる。

4 第16条本文及び第17条の規定は、第1項の決定について準用する。

原状回復の裁判

民事保全法第33条

仮処分命令に基づき、債権者が物の引渡し若しくは明渡し若しくは金銭の支払を受け、又は物の使用若しくは保管をしているときは、裁判所は、債務者の申立てにより、前条第1項の規定により仮処分命令を取り消す決定において、債権者に対し、債務者が引き渡し、若しくは明け渡した物の返還、債務者が支払った金銭の返還又は債権者が使用若しくは保管をしている物の返還を命ずることができる。

保全命令を取り消す決定の効力

民事保全法第34条

裁判所は、第32条第1項の規定により保全命令を取り消す決定において、その送達を受けた日から2週間を超えない範囲内で相当と認める一定の期間を経過しなければその決定の効力が生じない旨を宣言することができる。ただし、その決定に対して保全抗告をすることができないときは、この限りでない。

保全異議の申立ての取下げ

民事保全法第35条 保全異議の申立てを取り下げるには、債権者の同意を得ることを要しない。

判事補の権限の特例

民事保全法第36条 保全異議の申立てについての裁判は、判事補が単独ですることができない。

第4節 保全取消し
(本案の訴えの不提起等による保全取消し)
民事保全法第37条 保全命令を発した裁判所は、債務者の申立てにより、債権者に対し、相当と認める一定の期間内に、本案の訴えを提起するとともにその提起を証する書面を提出し、既に本案の訴えを提起しているときはその係属を証する書面を提出すべきことを命じなければならない。
2 前項の期間は、2週間以上でなければならない。
3 債権者が第1項の規定により定められた期間内に同項の書面を提出しなかったときは、裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消さなければならない。
4 第1項の書面が提出された後に、同項の本案の訴えが取り下げられ、又は却下された場合には、その書面を提出しなかったものとみなす。
5 第1項及び第3項の規定の適用については、本案が家事事件手続法(平成23年法律第52号)第257条第1項に規定する事件であるときは家庭裁判所に対する調停の申立てを、本案が労働審判法(平成16年法律第45号)第1条に規定する事件であるときは地方裁判所に対する労働審判手続の申立てを、本案に関し仲裁合意があるときは仲裁手続の開始の手続を、本案が公害紛争処理法(昭和45年法律第108号)第2条に規定する公害に係る被害についての損害賠償の請求に関する事件であるときは同法第42条の12第1項に規定する損害賠償の責任に関する裁定(次項において「責任裁定」という。)の申請を本案の訴えの提起とみなす。
6 前項の調停の事件、同項の労働審判手続、同項の仲裁手続又は同項の責任裁定の手続が調停の成立、労働審判(労働審判法第29条第2項において準用する民事調停法(昭和26年法律第222号)第16条の規定による調停の成立及び労働審判法第24条第1項の規定による労働審判事件の終了を含む。)、仲裁判断又は責任裁定(公害紛争処理法第42条の24第2項の当事者間の合意の成立を含む。)によらないで終了したときは、債権者は、その終了の日から第1項の規定により定められた期間と同一の期間内に本案の訴えを提起しなければならない。
7 第3項の規定は債権者が前項の規定による本案の訴えの提起をしなかった場合について、第4項の規定は前項の本案の訴えが提起され、又は労働審判法第22条第1項(同法第23条第2項及び第24条第2項において準用する場合を含む。)の規定により訴えの提起があったものとみなされた後にその訴えが取り下げられ、又は却下された場合について準用する。
8 第16条本文及び第17条の規定は、第3項(前項において準用する場合を含む。)の規定による決定について準用する。
(事情の変更による保全取消し)
民事保全法第38条 保全すべき権利若しくは権利関係又は保全の必要性の消滅その他の事情の変更があるときは、保全命令を発した裁判所又は本案の裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消すことができる。
2 前項の事情の変更は、疎明しなければならない。
3 第16条本文、第17条並びに第32条第2項及び第3項の規定は、第1項の申立てについての決定について準用する。
(特別の事情による保全取消し)
民事保全法第39条 仮処分命令により償うことができない損害を生ずるおそれがあるときその他の特別の事情があるときは、仮処分命令を発した裁判所又は本案の裁判所は、債務者の申立てにより、担保を立てることを条件として仮処分命令を取り消すことができる。
2 前項の特別の事情は、疎明しなければならない。
3 第16条本文及び第17条の規定は、第1項の申立てについての決定について準用する。
(保全異議の規定の準用等)
民事保全法第40条 第27条から第29条まで、第31条及び第33条から第36条までの規定は、保全取消しに関する裁判について準用する。ただし、第27条から第29条まで、第31条、第33条、第34条及び第36条の規定は、第37条第1項の規定による裁判については、この限りでない。
2 前項において準用する第27条第1項の規定による裁判は、保全取消しの申立てが保全命令を発した裁判所以外の本案の裁判所にされた場合において、事件の記録が保全命令を発した裁判所に存するときは、その裁判所も、これをすることができる。
第5節 保全抗告
(保全抗告)
民事保全法第41条 保全異議又は保全取消しの申立てについての裁判(第33条(前条第1項において準用する場合を含む。)の規定による裁判を含む。)に対しては、その送達を受けた日から2週間の不変期間内に、保全抗告をすることができる。ただし、抗告裁判所が発した保全命令に対する保全異議の申立てについての裁判に対しては、この限りでない。
2 原裁判所は、保全抗告を受けた場合には、保全抗告の理由の有無につき判断しないで、事件を抗告裁判所に送付しなければならない。
3 保全抗告についての裁判に対しては、更に抗告をすることができない。
4 第16条本文、第17条並びに第32条第2項及び第3項の規定は保全抗告についての決定について、第27条第1項、第4項及び第5項、第29条、第31条並びに第33条の規定は保全抗告に関する裁判について、民事訴訟法第349条の規定は保全抗告をすることができる裁判が確定した場合について準用する。
5 前項において準用する第27条第1項の規定による裁判は、事件の記録が原裁判所に存するときは、その裁判所も、これをすることができる。
(保全命令を取り消す決定の効力の停止の裁判)
民事保全法第42条 保全命令を取り消す決定に対して保全抗告があった場合において、原決定の取消しの原因となることが明らかな事情及びその命令の取消しにより償うことができない損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったときに限り、抗告裁判所は、申立てにより、保全抗告についての裁判をするまでの間、担保を立てさせて、又は担保を立てることを条件として保全命令を取り消す決定の効力の停止を命ずることができる。
2 第15条、第27条第4項及び前条第5項の規定は、前項の規定による裁判について準用する。

第3章 保全執行に関する手続
第1節 総則
(保全執行の要件)
第43条 保全執行は、保全命令の正本に基づいて実施する。ただし、保全命令に表示された当事者以外の者に対し、又はその者のためにする保全執行は、執行文の付された保全命令の正本に基づいて実施する。
2 保全執行は、債権者に対して保全命令が送達された日から2週間を経過したときは、これをしてはならない。
3 保全執行は、保全命令が債務者に送達される前であっても、これをすることができる。
(追加担保を提供しないことによる保全執行の取消し)
第44条 第32条第2項(第38条第3項及び第41条第4項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により担保を立てることを保全執行の続行の条件とする旨の裁判があったときは、債権者は、第32条第2項の規定により定められた期間内に担保を立てたことを証する書面をその期間の末日から1週間以内に保全執行裁判所又は執行官に提出しなければならない。
2 債権者が前項の規定による書面の提出をしない場合において、債務者が同項の裁判の正本を提出したときは、保全執行裁判所又は執行官は、既にした執行処分を取り消さなければならない。
3 民事執行法第40条第2項の規定は、前項の規定により執行処分を取り消す場合について準用する。
(第三者異議の訴えの管轄裁判所の特例)
第45条 高等裁判所が保全執行裁判所としてした保全執行に対する第三者異議の訴えは、仮に差し押さえるべき物又は係争物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
(民事執行法の準用)
第46条 この章に特別の定めがある場合を除き、民事執行法第5条から第14条まで、第16条、第18条、第23条第1項、第26条、第27条第2項、第28条、第30条第2項、第32条から第34条まで、第36条から第38条まで、第39条第1項第1号から第4号まで、第6号及び第7号、第40条並びに第41条の規定は、保全執行について準用する。
第2節 仮差押えの執行
(不動産に対する仮差押えの執行)
第47条 民事執行法第43条第1項に規定する不動産(同条第2項の規定により不動産とみなされるものを含む。)に対する仮差押えの執行は、仮差押えの登記をする方法又は強制管理の方法により行う。これらの方法は、併用することができる。
2 仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行については、仮差押命令を発した裁判所が、保全執行裁判所として管轄する。
3 仮差押えの登記は、裁判所書記官が嘱託する。
4 強制管理の方法による仮差押えの執行においては、管理人は、次項において準用する民事執行法第107条第1項の規定により計算した配当等に充てるべき金銭を供託し、その事情を保全執行裁判所に届け出なければならない。
5 民事執行法第46条第2項、第47条第1項、第48条第2項、第53条及び第54条の規定は仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行について、同法第44条、第46条第1項、第47条第2項、第6項本文及び第7項、第48条、第53条、第54条、第93条から第93条の3まで、第94条から第104条まで、第106条並びに第107条第1項の規定は強制管理の方法による仮差押えの執行について準用する。
(船舶に対する仮差押えの執行)
第48条 船舶に対する仮差押えの執行は、仮差押えの登記をする方法又は執行官に対し船舶の国籍を証する文書その他の船舶の航行のために必要な文書(以下この条において「船舶国籍証書等」という。)を取り上げて保全執行裁判所に提出すべきことを命ずる方法により行う。これらの方法は、併用することができる。
2 仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行は仮差押命令を発した裁判所が、船舶国籍証書等の取上げを命ずる方法による仮差押えの執行は船舶の所在地を管轄する地方裁判所が、保全執行裁判所として管轄する。
3 前条第3項並びに民事執行法第46条第2項、第47条第1項、第48条第2項、第53条及び第54条の規定は仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行について、同法第45条第3項、第47条第1項、第53条、第116条及び第118条の規定は船舶国籍証書等の取上げを命ずる方法による仮差押えの執行について準用する。
(動産に対する仮差押えの執行)
第49条 動産に対する仮差押えの執行は、執行官が目的物を占有する方法により行う。
2 執行官は、仮差押えの執行に係る金銭を供託しなければならない。仮差押えの執行に係る手形、小切手その他の金銭の支払を目的とする有価証券でその権利の行使のため定められた期間内に引受け若しくは支払のための提示又は支払の請求を要するものについて執行官が支払を受けた金銭についても、同様とする。
3 仮差押えの執行に係る動産について著しい価額の減少を生ずるおそれがあるとき、又はその保管のために不相応な費用を要するときは、執行官は、民事執行法の規定による動産執行の売却の手続によりこれを売却し、その売得金を供託しなければならない。
4 民事執行法第123条から第129条まで、第131条、第132条及び第136条の規定は、動産に対する仮差押えの執行について準用する。
(債権及びその他の財産権に対する仮差押えの執行)
第50条 民事執行法第143条に規定する債権に対する仮差押えの執行は、保全執行裁判所が第3債務者に対し債務者への弁済を禁止する命令を発する方法により行う。
2 前項の仮差押えの執行については、仮差押命令を発した裁判所が、保全執行裁判所として管轄する。
3 第3債務者が仮差押えの執行がされた金銭の支払を目的とする債権の額に相当する金銭を供託した場合には、債務者が第22条第1項の規定により定められた金銭の額に相当する金銭を供託したものとみなす。ただし、その金銭の額を超える部分については、この限りでない。
4 第1項及び第2項の規定は、その他の財産権に対する仮差押えの執行について準用する。
5 民事執行法第145条第2項から第6項まで、第146条から第153条まで、第156条(第3項を除く。)、第164条第5項及び第6項並びに第167条の規定は、第1項の債権及びその他の財産権に対する仮差押えの執行について準用する。
(仮差押解放金の供託による仮差押えの執行の取消し)
第51条 債務者が第22条第1項の規定により定められた金銭の額に相当する金銭を供託したことを証明したときは、保全執行裁判所は、仮差押えの執行を取り消さなければならない。
2 前項の規定による決定は、第46条において準用する民事執行法第12条第2項の規定にかかわらず、即時にその効力を生ずる。
第3節 仮処分の執行
(仮処分の執行)
第52条 仮処分の執行については、この節に定めるもののほか、仮差押えの執行又は強制執行の例による。
2 物の給付その他の作為又は不作為を命ずる仮処分の執行については、仮処分命令を債務名義とみなす。
(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行)
第53条 不動産に関する権利についての登記(仮登記を除く。)を請求する権利(以下「登記請求権」という。)を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。
2 不動産に関する所有権以外の権利の保存、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、前項の処分禁止の登記とともに、仮処分による仮登記(以下「保全仮登記」という。)をする方法により行う。
3 第47条第2項及び第3項並びに民事執行法第48条第2項、第53条及び第54条の規定は、前2項の処分禁止の仮処分の執行について準用する。
(不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行)
第54条 前条の規定は、不動産に関する権利以外の権利で、その処分の制限につき登記又は登録を対抗要件又は効力発生要件とするものについての登記(仮登記を除く。)又は登録(仮登録を除く。)を請求する権利を保全するための処分禁止の仮処分の執行について準用する。
(債務者を特定しないで発された占有移転禁止の仮処分命令の執行)
第54条の2 第25条の2第1項の規定による占有移転禁止の仮処分命令の執行は、係争物である不動産の占有を解く際にその占有者を特定することができない場合は、することができない。
(建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の執行)
第55条 建物の収去及びその敷地の明渡しの請求権を保全するため、その建物の処分禁止の仮処分命令が発せられたときは、その仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。
2 第47条第2項及び第3項並びに民事執行法第48条第2項、第53条及び第54条の規定は、前項の処分禁止の仮処分の執行について準用する。
(法人の代表者の職務執行停止の仮処分等の登記の嘱託)
第56条 法人を代表する者その他法人の役員として登記された者について、その職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分命令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされた場合には、裁判所書記官は、法人の本店又は主たる事務所の所在地(外国法人にあっては、各事務所の所在地)を管轄する登記所にその登記を嘱託しなければならない。ただし、これらの事項が登記すべきものでないときは、この限りでない。
(仮処分解放金の供託による仮処分の執行の取消し)
第57条 債務者が第25条第1項の規定により定められた金銭の額に相当する金銭を供託したことを証明したときは、保全執行裁判所は、仮処分の執行を取り消さなければならない。
2 第51条第2項の規定は、前項の規定による決定について準用する。
第4章 仮処分の効力
(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の効力)
第58条 第53条第1項の処分禁止の登記の後にされた登記に係る権利の取得又は処分の制限は、同項の仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をする場合には、その登記に係る権利の取得又は消滅と抵触する限度において、その債権者に対抗することができない。
2 前項の場合においては、第53条第1項の仮処分の債権者(同条第2項の仮処分の債権者を除く。)は、同条第1項の処分禁止の登記に後れる登記を抹消することができる。
3 第53条第2項の仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をするには、保全仮登記に基づく本登記をする方法による。
4 第53条第2項の仮処分の債権者は、前項の規定により登記をする場合において、その仮処分により保全すべき登記請求権に係る権利が不動産の使用又は収益をするものであるときは、不動産の使用若しくは収益をする権利(所有権を除く。)又はその権利を目的とする権利の取得に関する登記で、同条第1項の処分禁止の登記に後れるものを抹消することができる。
(登記の抹消の通知)
第59条 仮処分の債権者が前条第2項又は第4項の規定により登記を抹消するには、あらかじめ、その登記の権利者に対し、その旨を通知しなければならない。
2 前項の規定による通知は、これを発する時の同項の権利者の登記簿上の住所又は事務所にあてて発することができる。この場合には、その通知は、遅くとも、これを発した日から1週間を経過した時に到達したものとみなす。
(仮処分命令の更正等)
第60条 保全仮登記に係る権利の表示がその保全仮登記に基づく本登記をすべき旨の本案の債務名義における権利の表示と符合しないときは、第53条第2項の処分禁止の仮処分の命令を発した裁判所は、債権者の申立てにより、その命令を更正しなければならない。
2 前項の規定による更正決定に対しては、即時抗告をすることができる。
3 第1項の規定による更正決定が確定したときは、裁判所書記官は、保全仮登記の更正を嘱託しなければならない。
(不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の効力)
第61条 前3条の規定は、第54条に規定する処分禁止の仮処分の効力について準用する。
(占有移転禁止の仮処分命令の効力)
第62条 占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたときは、債権者は、本案の債務名義に基づき、次に掲げる者に対し、係争物の引渡し又は明渡しの強制執行をすることができる。
1 当該占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたことを知って当該係争物を占有した者
2 当該占有移転禁止の仮処分命令の執行後にその執行がされたことを知らないで当該係争物について債務者の占有を承継した者
2 占有移転禁止の仮処分命令の執行後に当該係争物を占有した者は、その執行がされたことを知って占有したものと推定する。
(執行文の付与に対する異議の申立ての理由)
第63条 前条第1項の本案の債務名義につき同項の債務者以外の者に対する執行文が付与されたときは、その者は、執行文の付与に対する異議の申立てにおいて、債権者に対抗することができる権原により当該物を占有していること、又はその仮処分の執行がされたことを知らず、かつ、債務者の占有の承継人でないことを理由とすることができる。
(建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の効力)
第64条 第55条第1項の処分禁止の登記がされたときは、債権者は、本案の債務名義に基づき、その登記がされた後に建物を譲り受けた者に対し、建物の収去及びその敷地の明渡しの強制執行をすることができる。
(詐害行為取消権を保全するための仮処分における解放金に対する権利の行使)
第65条 民法(明治29年法律第89号)第424条第1項の規定による詐害行為取消権を保全するための仮処分命令において定められた第25条第1項の金銭の額に相当する金銭が供託されたときは、同法第424条第1項の債務者は、供託金の還付を請求する権利(以下「還付請求権」という。)を取得する。この場合において、その還付請求権は、その仮処分の執行が第57条第1項の規定により取り消され、かつ、保全すべき権利についての本案の判決が確定した後に、その仮処分の債権者が同法第424条第1項の債務者に対する債務名義によりその還付請求権に対し強制執行をするときに限り、これを行使することができる。
第5章 罰則
(公示書等損壊罪)
第66条 第52条第1項の規定によりその例によることとされる民事執行法第168条の2第3項又は第4項の規定により執行官が公示するために施した公示書その他の標識を損壊した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
(陳述等拒絶の罪)
第67条 第52条第1項の規定によりその例によることとされる民事執行法第168条第2項の規定による執行官の質問又は文書の提出の要求に対し、正当な理由なく、陳述をせず、若しくは文書の提示を拒み、又は虚偽の陳述をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提示した債務者又は同項に規定する不動産等を占有する第三者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

民事保全とは、強制執行ができなくなるおそれがあったり、強制執行が著しく困難になるおそれがあったりするときなどに、債権者の権利実現を保全するために行う仮差押・仮処分のことで、裁判所に申立てて裁判官と面接をし、担保決定によって担保を立てる(供託する)ことにより、原則として債務者に知られずに仮に差押えなどができる制度です。

証拠書類は、債務者に知られないのか?

担保は大まかに請求金額の10~30%といわれています。(参考

債務者は、保全の必要性がないときなどには、送達日から2週間以内に保全命令の取消し(保全異議)を申立てることができます

  • 保全執行裁判所は、申立てにより保全命令や保全執行を行います。(民事保全法第2条
  • 民事保全の裁判は口頭弁論を経ないですることができる任意的口頭弁論です。(民事保全法第3条
  • 担保は、地方裁判所の管轄区域内の供託所に金銭または有価証券(振替債含む)を供託するか、銀行等と支払保証委託契約を締結する方法によって立てることができます。(民事保全法第4条民事保全規則第2条
  • 被告は、訴訟費用に関して担保から他の債権者に先立って弁済を受ける権利を有します。(民事訴訟法第77条)また、担保を立てた者が担保の事由消滅を証明したときや担保権利者の同意を得た場合は、申立てによって担保の取消し決定を受けられます。(民事訴訟法第79条)(民事保全法第4条
  • 民事保全に関しては、専属管轄です。(民事保全法第6条
  • 裁判所は、争いのある事実関係について、当事者の主張を明瞭にさせる必要があるときは、口頭弁論や審尋期日において、当事者のため事務を処理または補助する者で裁判所が相当と認めるものに陳述をさせることができます。(民事保全法第9条
項目内容
申立手数料2,000円
郵便切手債務者1,099円+2,008円×第三債務者数(東京地方裁判所債権仮差押
┗第三債務者への特別送達料1,145円
┗第三債務者への速達料260円
┗裁判所用の陳述書返送料(書留)519円
┗債権者用の陳述書返送料84円
添付書類申立書
※当事者目録、請求債権目録、仮差押債権目録
資格証明書(商業登記事項証明書)
不動産登記事項証明書
訴訟委任状
被保全権利の存在を証する書証
┗金銭消費貸借契約書
┗保証書
┗賃貸借契約書
保全の必要性を証する書証
┗内容証明郵便
┗陳述書

東京地方裁判所「民事第9部保全部の概要」

東京地方裁判所「2. 保全事件の申立て」

保全命令

管轄

保全命令事件は、仮差押え・仮処分の対象が国内にあるときに限って日本の裁判所に訴えを提起できます。(民事保全法第11条

本案の管轄裁判所のほか、仮差押え・仮処分の対象物の所在地を管轄する地方裁判所にも管轄権があります。対象が債権その他の財産権であるときは、債権は第三債務者の普通裁判籍の所在地にあるものとされます。(民事訴訟法第12条

申立て

保全命令の申立ては、趣旨と保全すべき権利または権利関係、保全の必要性を明らかにしてしなければなりません。(民事保全法第13条

保全命令は担保の有無があり、担保が必要な場合には、遅滞なく保全命令を発する裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に供託するのが原則ですが、困難な事由があれば、裁判所の許可を得て債権者の住所地・事務所の所在地その他裁判所が相当と認める地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に供託できます。(民事保全法第14条

保全命令の決定には理由が付され(民事保全法第16条)、当事者に送達されます。(民事保全法第17条

保全命令の申立てが却下された場合、債権者は告知を受けた日から2週間の不変期間内に即時抗告をすることができます(民事訴訟法第19条)。

仮差押命令

仮差押命令は、金銭債権の強制執行ができなくなるおそれがあるとき、強制執行に著しい困難を生ずるおそれがあるとき、特定物を対象に発することができます。ただし動産は目的物を特定する必要はありません。(民事保全法第20条・第21条)

債務者は、仮差押命令で定められた金銭額(仮差押解放金)を供託すると、仮差押えの執行の停止や取消しを得ることができます。(民事保全法第22条

仮処分命令

係争物に関する仮処分命令は、現状の変更により債権者が権利実行不可能となるおそれがあるとき、権利実行に著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができ、仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害または急迫の危険を避けるために必要とするときに発することができます。(民事訴訟法第23条

省略

保全異議

債務者は、保全命令に対して保全異議を申し立てることができます。(民事保全法第26条

保全命令の取消しの原因となることが明らかな事情と保全執行により償うことができない損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったときに限り、申立てにより決定(既にした保全命令の取消し・変更・認可)までの間に担保を立てることを条件に、保全執行の停止や取消しを命じてもらうことが可能です。(民事保全法第27条

保全異議の審理は、口頭弁論か当事者双方立会の審尋期日を経なければなりません。(民事保全法第29条

審理の終結は相当の猶予期間を置いて審理終結日を決定しなければなりませんが、口頭弁論か審尋期日においては直ちに審理終結の宣言ができます。(民事保全法第31条

保全取消し

保全命令のあと、債務者は、裁判所が債権者に相当と認める2週間以上の期間内に本案の訴えを提起するとともに、その提起を証する書面を提出または係属を証する書面を提出すべきことを命じる申立てをすることができます。書面の提出がなければ、債務者は保全命令の取消しを申し立てることも可能です。(民事保全法第37条

また、債務者は保全すべき権利や権利関係、保全の必要性の消滅その他の事情の変更があるときは、疎明による申立てにより保全命令の取消しができます。(民事保全法第38条

保全抗告

保全異議や保全取消しの裁判については、送達日から2週間の不変期間内に保全抗告をすることができます(抗告裁判所が発した保全命令に対する保全異議の申立ての裁判を除く)。このとき、裁判をした裁判所は抗告の理由にかかわらず事件を抗告裁判所に送付します。再抗告は認められていません。(民事保全法第41条

保全執行

保全執行は、債権者への保全命令送達日から2週間以内に、保全命令の正本により実施します。債務者に送達されなくても保全執行は可能です。(民事保全法第43条

不動産に対する仮差押執行

不動産に対する仮差押執行は、仮差押えの登記または強制管理、併用する方法によって行います。(民事保全法第47条

動産に対する仮差押執行

動産に対する仮差押執行は、執行官が目的物を占有する方法によって行いますが、著しい価額の減少を生ずるおそれがあるときや保管のために不相応な費用を要するときは、動産執行の売却手続により売却し、売得金を供託します。(民事保全法第49条

債権その他の財産権に対する仮差押執行

債権その他の財産権に対する仮差押執行は、第三債務者に対し債務者への弁済を禁止する命令を発する方法により行いますが、第三債務者は、金銭債権額に相当する金銭を供託することもでき、供託した場合は債務者が仮差押解放金を供託したものとみなされるので、仮差押執行の取消しができます。(民事保全法第50条

仮処分執行

省略

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