当事者能力と選定当事者

当事者能力の意義

当事者能力とは、訴訟上・手続上の請求定立の主体及びその相手方のことです。

犬や猫を相手に訴えることはできませんが、人間や法人に対しては訴えることができます。犬や猫には民法が適用されませんが、人間や法人には民法が適用されるからです。

このように、民法の適用対象、すなわち権利・義務の帰属主体となり得る資格のことを当事者能力といいます

当事者能力の原則

当事者能力や訴訟能力(手続行為能力)、訴訟無能力者の法定代理は、原則として民法その他の法令に従うものとします。(民事訴訟法28条家事事件手続法第17条もこれを準用)

当事者能力まとめ

対象者当事者能力根拠条文
自然人民法第3条
法人民法第34条
法人でない社団又は財団代表者又は管理人の名において◯民事訴訟法29条
家事事件手続法第17条
共同の利益を有する多数の者◯(選定当事者制度について後述)民事訴訟法第30条

選定当事者

家事調停・家事審判事件については適用されません。

(選定当事者)

第三十条 共同の利益を有する多数の者で前条の規定に該当しないものは、その中から、全員のために原告又は被告となるべき一人又は数人を選定することができる。

 訴訟の係属の後、前項の規定により原告又は被告となるべき者を選定したときは、他の当事者は、当然に訴訟から脱退する。

 係属中の訴訟の原告又は被告と共同の利益を有する者で当事者でないものは、その原告又は被告を自己のためにも原告又は被告となるべき者として選定することができる。

 第一項又は前項の規定により原告又は被告となるべき者を選定した者(以下「選定者」という。)は、その選定を取り消し、又は選定された当事者(以下「選定当事者」という。)を変更することができる。

 選定当事者のうち死亡その他の事由によりその資格を喪失した者があるときは、他の選定当事者において全員のために訴訟行為をすることができる。

引用元:民事訴訟法第30条

要件

選定当事者制度は、共同の利益を有する多数の者であって、法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがなく、代表者又は管理人の名において訴え、又は訴えられることができないものから、全員のために原告又は被告となるべき1人又は数人を選定することができます。(民事訴訟法第30条第1項)

方法

選定方法の規定はありませんが、選定当事者についての書面を裁判所に提出しなければなりません。(民事訴訟規則第15条

効果としての権利義務

当事者を選定すると、選定された当事者は、共同の利益を有する全員のために原告又は被告として訴訟行為を遂行します。(民事訴訟法第30条第1項)

訴訟の係属後に当事者を選定した場合

訴訟の係属後に当事者が選定されると、他の当事者は当然に訴訟から脱退し、訴訟行為を遂行することができなくなります。(民事訴訟法第30条第2項)

ただし、係属中の訴訟の原告又は被告と共同の利益を有する者であって当事者でないものは、その原告又は被告を自己のためにも原告又は被告となるべき者として選定することができます

請求の追加

選定当事者が原告である場合は、口頭弁論の終結に至るまで、その選定者のために請求の追加をすることができ、被告の選定があった場合には、原告は、口頭弁論の終結に至るまでその選定者に係る請求の追加をすることができます。ただし、著しく訴訟手続を遅滞させることとなるときはこの限りではなく、請求の追加は書面でし、相手方に送達しなければならず、その追加を裁判所が不当であると認めるときは、申立てにより又は職権で、その追加を許さない旨の決定をしなければなりません。(民事訴訟法第144条

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