裁判官又は裁判所書記官の除斥
除斥原因
裁判官・裁判所書記官・参与員・家事調停官は、次の場合には、その職務の執行から除斥されます。(民事訴訟法23条第1項、家事事件手続法第10条第1項、同法第13条第1項、同法第14条第1項、同法第15条第1項)
- 裁判官又はその配偶者若しくはその配偶者であった者が、事件の当事者若しくはその他の審判を受ける者となるべき者であるとき、又は事件について当事者と共同権利者、共同義務者若しくは償還義務者の関係にあるとき
- 裁判官が当事者又はその他の審判を受ける者となるべき者の4親等内の血族、3親等内の姻族若しくは同居の親族であるとき、又はあったとき
- 裁判官が当事者又はその他の審判を受ける者となるべき者の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき
- 裁判官が事件について証人又は鑑定人となったとき、又は尋問を受けることとなったとき
- 裁判官が事件について当事者若しくはその他の審判を受ける者となるべき者の代理人又は補佐人であるとき、又はあったとき
- 裁判官が事件について仲裁判断に関与し、又は不服を申し立てられた前審の裁判に関与したとき
※他の裁判所の嘱託により受託裁判官としてその職務を行うことは可
除斥要件・除斥の開始
除斥原因があるとき、裁判所は、申立てにより又は職務で、除斥の裁判をします。(民事訴訟法23条第2項、家事事件手続法第10条第2項)
除斥の申立ての効果
除斥又は忌避の申立てがあったときは、その申立てについてその決定が確定するまでは、訴訟手続を停止しなければなりません。ただし、急速を要する行為についてはこの限りではありません。(民事訴訟法第26条)
裁判所書記官・参与員・家事調停官の場合には、手続は停止しません。
裁判官又は裁判所書記官の忌避
忌避要件
裁判官・裁判所書記官・参与員・家事調停官について裁判又は調停の公正を妨げるべき事情があるときは、当事者は、裁判官の面前において弁論し、又は弁論準備手続において申述(事件について陳述)をするまで、その裁判官又は裁判所書記官を忌避することができます。忌避の原因があることを知らなかったとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、弁論・申述をした後でも忌避をすることが可能です。(民事訴訟法第24条、家事事件手続法第11条)
家事事件手続法は、さらに、次の要件も規定しています。(家事事件手続法第12条第5項)
- 家事事件の手続を遅滞させる目的のみでされたことが明らかなとき
- 最高裁判所規則で定める手続に違反するとき
忌避の開始・申立て
忌避は、職権で開始されないので、当事者の申立てのみによって開始されます。申立ては、その裁判官又は裁判所書記官が所属する裁判所に対して原因を明示して、書面によって行います。(規則10条1項3号)
忌避の申立ての効果
除斥又は忌避の申立てがあったときは、その申立てについてその決定(裁判)が確定するまでは、訴訟手続(家事事件の手続)を停止しなければなりません。ただし、急速を要する行為についてはこの限りではありません。(民事訴訟法第26条、家事事件手続法第12条第4項)
また、家事事件の場合、次の事由があるとして忌避の却下をする裁判をした場合は、家事事件の手続は停止しません。(家事事件手続法第12条第7項)
- 家事事件の手続を遅滞させる目的のみでされたことが明らかなとき
- 当事者が、裁判官の面前において事件について陳述をしたとき
- 最高裁判所規則で定める手続に違反するとき
除斥又は忌避の裁判
裁判をする裁判所
排斥又は忌避の裁判は、下表のとおり、決定で、裁判をします。(民事訴訟法25条)
書記官の場合、その所属裁判所が裁判をします。(民事訴訟法第27条)
対象裁判官 | 裁判 |
---|---|
合議体の構成員 | 所属裁判所 ※合議体でする(2項) |
地方裁判所の1人の裁判官 ※家事事件は家庭裁判所 | 所属裁判所 ※合議体でする(2項) |
簡易裁判所 | 簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所 ※裁判所書記官については所属裁判所(27条) |
不服申立て
排斥又は忌避について、理由があるとする決定に対しては不服申立てができませんが、理由がないとする決定に対しては即時抗告ができます。(民事訴訟法25条)
コメント