弁論準備手続

弁論準備手続の意義・性質

弁論準備手続とは、裁判所が争点及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときに、当事者の意見を聴いて付することができる(民事訴訟法第168条)、当事者双方が立ち会うことができる期日において(民事訴訟法第169条第1項)、相当と認める者のみ傍聴を認める原則非公開・制限公開・許可制(当事者が申し出た者は原則許可)民事訴訟法第169条第2項)で行われる、口頭弁論期日外証拠及び争点整理手続です。

当事者及び裁判所が事実並びに証拠について緊密に意見を交換しながら争点整理を進めることが望ましいという考え方から、弁論準備手続が原則的な争点整理の方式と評価されています。

一般的には、第1回口頭弁論期日を開くと事件は弁論準備手続に付すことになりますが、当事者に異議がなければ最初から弁論準備手続に付すことも可能です(民事訴訟規則第60条第1項但書)。

社会的関心が高く、争点整理自体について広く一般人の傍聴を認めることが合理的と考えられる事件については、準備的口頭弁論による争点整理が適するといわれています。その他、争点整理において人証を要する場合には準備的口頭弁論による必要があります。

争点整理の意義については以下の記事。

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伊藤眞 (東京大学名誉教授)/著『民事訴訟法 第7版』(有斐閣、2020年)292頁

弁論準備手続における審理

弁論準備手続は、裁判長が、期日を指定し(民事訴訟法第93条)多くの場合は口頭の告知により当事者を呼出し(民事訴訟法第94条第1項)、裁判長の指揮により(民事訴訟法第148条)釈明権の行使(民事訴訟法第149条)、釈明処分(民事訴訟法第151条)、弁論準備手続の制限・分離・併合(民事訴訟法第152条第1項)、弁論準備手続の再開(民事訴訟法第153条)、時機に後れた攻撃防御方法の却下(民事訴訟法第157条)、準備書面の提出期間の定め(民事訴訟法第162条)、文書の証拠調べ、和解の試み(民事訴訟法第89条第1項)などの訴訟行為をすることができます。(民事訴訟法第170条

当事者は、適時提出主義(民事訴訟法第156条)及び準備書面の提出期間の定め(民事訴訟法第162条)に従って書証を提出するなどしながら争点及び証拠の整理を進めます。

当事者の一方が最初にすべき弁論準備手続の期日に欠席したときは、裁判所は、欠席者が提出した準備書面に記載した事項の擬制陳述が認められます(民事訴訟法第158条)が、続行期日においては擬制自白(民事訴訟法第159条)が成立する余地があります。

当事者双方が欠席して1月以内に期日指定の申立てをしないとき、当事者双方が連続2回欠席したときは、訴えの取下げがあったものとみなされ(本来は相手方の同意が必要だが双方欠席なら同意が擬制されるものと考える)(民事訴訟法第263条)、訴訟は初めから係属していなかったものとみなされ(民事訴訟第262条)てしまいます。または、弁論準備手続の終結若しくは弁論準備手続に付する裁判の取消し(民事訴訟法第172条)から適切なものを、訴訟指揮権の下、選択されます。

裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聞いて、裁判所又は受命裁判官が通話者及び通話者の所在する場所の状況が当該方法によって手続を実施するために適切なものであることを確認することにより(民事訴訟規則第88条第2項)、裁判所と当事者双方が通話をする電話会議システムによって手続を進められます。(民事訴訟法第170条第3項

また、当事者は、文書提出命令の申立てや補助参加の申出をすることができ、これらは口頭弁論期日外でもすることができる裁判です。

さらに、当事者は、相手方の同意を得て訴えを取下げ(民事訴訟法第261条)、請求の放棄又は認諾(民法第266条)をすることもできます。

裁判所は、弁論準備手続を終了するに当たり、その後の証拠調べ(人証)により証明すべき事実を当事者との間で確認し、裁判長は、相当と認めるときは、終了に当たり、当事者に争点及び証拠の整理の結果をようやくした書面を提出させることができます。(民事訴訟法第165条

ここまで民事訴訟法第170条の準用

必要的口頭弁論の原則を前提とし、口頭主義及び直接主義の要請を満たすため、当事者は、調書や準備書面に基づいて、口頭弁論において、その後の証拠調べにおいて証明すべき事実を明らかにして(民事訴訟規則第89条)弁論準備手続の結果を陳述しなければなりません。(民事訴訟法第173条

結果陳述は、弁論準備手続において、人証すべき要証事実を(証人A)のように記載した準備書面を記載しておけば足りるものと考えます

裁判官が、「弁論準備手続の結果を陳述したこととします」といって終わりというケースが多いようです。筆者の場合は、裁判所書記官が「結果陳述、結果陳述」と小声で数回ほど裁判官に伝えていました。

弁論準備手続の終結後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、弁論準備手続の終了前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければなりません民事訴訟法第174条民事訴訟法第167条を準用)。

伊藤眞 (東京大学名誉教授)/著『民事訴訟法 第7版』(有斐閣、2020年)292頁

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